◆ 第4サイクル・シーン2 ◆  「見えもやすると敷妙の」


 Scene Player ―― 会計:三好 死織



ユヤ : さあ、誰から行こうか。

龍之助 : 俺は、水波が動く4シーン目までに死織ちゃんと会えればと思ってる。

秘野森 : 僕は後でいい。

シオリ : じゃ、私いくね。ドラマシーン! ……3。

GM : 「学校のトイレ」。

シオリ : トイレ!? まずい。

GM : まずいの!?

シオリ : うん、あの、会長と話がしたかっ……

龍之助 : えっと、えっと、あ、間のとこ!

秘野森 : 出た所の、男子と女子の間のとこで!

シオリ : そっか! じゃ、トイレから出て来たところで鉢合わせて、にしようか。




秘野森 : 「おっと、……これは三好君」

シオリ : 「……」

秘野森 : 「調子はどうかな」

シオリ : 「……たぶん。……だいじょうぶ」




ユヤ : (ひそひそ)……え、あ、シオリちゃん会長の【秘密】まだ持ってない?

龍之助 : (こくこくこく)



シオリ : 「聞きたいことが……あったんです」

秘野森 : 「……。何かな」



 暫くの間じっと黙っていてから、下を向いたままでシオリが口を開いた。


シオリ : 「告白される方と告白する方、……どっちが……いい、ですか」

秘野森 : 「…… ……?」



 微妙な沈黙。


秘野森 : 「……質問の意図がよく分からないが、……だが、あまり自分から告白をするというのは、……僕だけではなく、ほとんどの男子が得意ではないのではないかな」

シオリ : 「えっ!?」

秘野森 : 「?」

シオリ : 「そう、……いうのって。男の子からしてくれるものって思っ……てた、んですけど」

秘野森 : 「いや、その。恐らくは、する時は勇気を振り絞ってするんだ。だが、だからと言ってする方が『好き』『得意』というわけではあるまい」

シオリ : 「会長は、その……陸奥先輩が好き、だから、……どっちなのかな、って、思って」

秘野森 : 「……。……うむ。難しい。それは非常に難しい問題だ」

シオリ : 「……」

秘野森 : 「別に……その、告白をしたとかそういうわけではないし、だからといってその……一般に言う恋人同士のような何かをしたわけでも全くもって無い。別にそうしたいともそこまで思っていない」

シオリ : 「でも、どっちかが言わなきゃ、関係って変わらないじゃないですか」




龍之助 : ……(横を向いて床をばんばん)

ユヤ : どした?

龍之助 : ……(耳打ち)

シオリ : あっれ!?

秘野森 : む!?

ユヤ : 言ったつもりだったって(笑)

秘野森 : えっ。

全員 :……!(爆笑)

シオリ : 衝撃の告白(笑)

GM : この朴念仁!(笑)

秘野森 : 「……! あっ、その、守るとか言われた気はするが、それはその……!」

GM : すごいな、ちゃんとラブコメしてる(笑)

ユヤ : コメの方が全力で発動してるようです。

秘野森 : 「……まあ、……悪い気はしなかった、な」

シオリ : 「(ひとしきり笑って)……そっか。そういうのに……こだわってちゃ、駄目なのかな」

秘野森 : 「こだわる? こだわる……ふむ。それは、プロポーズの話か」

シオリ : 「…………まあ、そんな感じ」

秘野森 : 「ふむ」

シオリ : 「だって、(ふわっと頭を揺らして微かに笑う)……憧れなんですよ。女の子からしてみたら」

秘野森 : 「ほう」

シオリ : 「そりゃ、今は逆からも流行ってるみたい……だけど」

秘野森 : 「なるほど」

シオリ : 「憧れを取るか。勇気を、出すか。……ずっと、悩んでて」

秘野森 : 「……」

シオリ : 「でも、……毎回毎回毎回毎回! ……ぜんぜんっ、……してくれないし」

秘野森 : 「察するにそれは何か、……恐らくは水波君とだと思うが、かねてからの約束のようなものだったのか」

シオリ : 「……(こくり)」

秘野森 : 「……なるほど」



 頷いたまま顔を上げない死織。


秘野森 : 「……三好君。気づいてはいるだろう」

シオリ : 「……」

秘野森 : 「今日は9月30日の――4回目だ」

シオリ : 「……分からないですよ。もっとかもしれません。私たちが気づいていないだけで」

秘野森 : 「……。あるいはそうかもしれん。そしてだ、……もし僕が、その原因を何とかしようとしている――と言ったら。君は協力をしてくれるか」



 長い沈黙。

 「原因を」「何とかする」……その言葉が意味する事柄は。



シオリ : 「……何とかしたい、と思ってます」

秘野森 : 「……」

シオリ : 「でも、……わからないです」

秘野森 : 「もしかしたら協力は出来ないかもしれない」

シオリ : 「……」

秘野森 : 「この時間が永遠に続くことを、良しとするかもしれない」

シオリ : 「まだ、私の中で決着がついていないから」

秘野森 : 「――そうか」

シオリ : 「ごめんなさい」

秘野森 : 「いや。……構わない」

シオリ : 「でも、終わらせなきゃいけないって思ってもいるんです」

秘野森 : 「そうだな。あるいは君の決断が、それを終わらせる手伝いになってくれるのかもしれない」

シオリ : 「……どう、なんでしょうか」

秘野森 : 「僕は、そこに期待をするとしよう。僕はただの、……少し他の人とは違うかもしれないが、あくまでただの高校生だ。生徒会長としてのことならば、決断はできる。だが今回の異変はそれを大いに逸脱している。

シオリ : 「でも、学校のことです」

秘野森 : 「そう。学校のことだ。だが……恐らく、君がまだ知らないこと、だが僕が知っていること……それが山とあって、それを今ここで伝えるべきかどうか……結論を出せずにいるんだ」

シオリ : 「……」



シオリ : 「……私と、会長が、結論を出せば。……進むんですかね」

秘野森 : 「分からん。……陸奥君がどう考えているのかも、分からん」

シオリ : 「……?」

秘野森 : 「僕が君に伝えておかなくてはならないことはただ一つ」

シオリ : (顔を上げる)

秘野森 : 「――僕は、『月読』を、排除する」

シオリ : 「――……」

秘野森 : 「……だから、それまでに君には決着をつけてほしい」



 穏やかな、優しげにさえ聞こえる声で、会長は死織に言った。


シオリ : 「……『月読』が一体何なのか、私には……分からない。でも、この状況を終わらせたいのは確かなんです」

秘野森 : 「……」

シオリ : 「だって。……あの約束に縛られて、私は何も出来ない。何も、進まない」

秘野森 : 「想いは確認できたはずだ。この文化祭前日という特別な時を通じて」

シオリ : 「(唇を尖らせて)そうですよ」

秘野森 : 「それは大きな前進だ。大きな一歩だ」

シオリ : 「だからっ。最後は、私がこだわってるだけなんですってばっ」



 すねたようにそっぽを向く死織の表情は、年相応の少女のもの。

 微笑ましく見守る秘野森は、それでも言わなければならない。



秘野森 : 「こだわるのは、構わない。だが、……時間は無限ではない」

シオリ : 「……」

秘野森 : 「だから、……『伝えられなくなる』前に、伝えてくれ」

シオリ : 「進む、前に」

秘野森 : 「そうだ」

シオリ : 「……」




秘野森 : 「……一つ、話をしよう。僕は今、すごく眠い」

シオリ : 「ねむ……?」

秘野森 : 「そうだ。3日前、2日前、昨日。日々、日中眠くて仕方がない」

シオリ : 「会長、冗談やめてくださいます」

秘野森 : 「冗談ではないよ」

シオリ : 「じゃあ、何なんですか」

秘野森 : 「その答えは、陸奥君や天波君が知っている。彼らとも話をしてくれ」

シオリ : 「……。わかり、ました」

秘野森 : 「衣装の調達は頼むよ」

シオリ : 「毎回毎回、しっかりやってるじゃないですか」

秘野森 : 「(笑う)……助かっている」




GM : では判定はっ。

シオリ : 感情判定!《仕込み》で……成功!

秘野森 : なにがでるかな。「共感」

シオリ : 「共感」

龍之助 : いいね、シーンに合ってる。

シオリ : そして【補給】! てやー! 成功! よかったです!