◆ オープニング・シーン04 ◆ 「ヒーローは待機中」


 Scene Player ―― 瀬戸 ハヤテ

 Scene Card ―― マヤカシ(正位置)



RL:(シーンタロットを見て)うーん先が見えない……

瀬戸ハヤテ:(顔を覆う)


RL:ハヤテは、ミーティングルームでぽつんと一人待たされています。

瀬戸ハヤテ:(膝を揃えている)

RL:本日は撮影開始の日です。しかも遅れに遅れた挙句のリミットの日だと聞いています。

永倉P:「もうこれ以上一日もまからねえぞ!!」

RL:とりあえず待機と言われたまま、当初予定の19時はとっくに過ぎています。

瀬戸ハヤテ:「永倉さんも伊達さんも…… こないなー……」


ぼんやりハヤテ

瀬戸 ハヤテ


永倉P:隣の部屋から「ア゛ー!!」ってポケットロンをソファーに投げる音がする。

伊達監督:反対側の部屋から「それじゃダメなんだよ!」って声がする。

瀬戸ハヤテ:「!?」

RL:どんどん不安になる要素しかない。

瀬戸ハヤテ:「どうしようかな…… 読む台本もないしな!?」

伊達監督:ないな!w

瀬戸ハヤテ:プロットは聞いてはいるから、こういう映画を撮りたいっていうふわっとしたものだけはある。

永倉P:ふんわり。

伊達監督:ふんわり。

瀬戸ハヤテ:「……ええ……? どうすんの……?」

RL:と言ううちに22時を回りました。

永倉P:地獄かなんかか!?

瀬戸ハヤテ:「だいじょぶかな、様子見に行った方がいいんじゃないかな……」

RL:向こうの方から、「順調に進んでます…… ので」って永倉の声が聞こえている。

瀬戸ハヤテ:「永倉さんずっと電話してるし、他の役者さん誰も来ないし…… いやこの状況に来られても逆に困るから、誰も来なくてよかったかも、うん……」

RL:ハヤテが無理やり自分を落ち着かせに掛かりはじめた頃。伊達監督、永倉プロデューサー、RLから登場要請をします。


永倉P:「おい、どうなってんだよ!!」扉がバーン!と音を立てて開きます。

瀬戸ハヤテ:「あ、永倉さん! あの」

永倉P:「あん!? ……ああ瀬戸か、悪い悪い」

瀬戸ハヤテ:「あの、誰も来ないんですけど」

永倉P:「おう誰も来ねえだろうよ、誰も手配できてねえからな!」

瀬戸ハヤテ:「ええっ!?」

RL:(笑)

伊達監督:反対側の扉が開きます。「おーい、脚本は何とかなりそうだぞー」

永倉P:「まじかよ!?」

伊達監督:「おー。タカちゃん、役者の方はどうなった?」

永倉P:「無理! あいつら全員キャンセルしやがった」

伊達監督:「そっかー。……そっ、えっ?」

瀬戸ハヤテ:「(間に入って)あ、あの伊達さん、台本は!」

伊達監督:「あ、台本ね!」とA4三ページくらいのを。

ALL:(爆笑)

永倉P:「そりゃプロットだろうがよ!!」

伊達監督:「台本。台本。」

瀬戸ハヤテ:「……!?(横を向けて厚みを見ている)」

永倉P:「俺の知ってるホンってのはこれじゃなかったぞ!?」

瀬戸ハヤテ:「この間のCMでももうちょっと厚かったと思うんですけど!」

伊達監督:「これ…… これはあれだよ、第一章のやつなんだよ! オープニングの」

瀬戸ハヤテ:「! あ、五月雨式ってやつですね!」

伊達監督:「そう! オレの尊敬するジョージ・A・ロメロ監督の『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』方式!」

永倉P:「お前から散々聞いたけれども!」

伊達監督:「ま、まあだから、ああいうふうに、撮りながらこう、書き続ける?」

永倉P:「お前そういう監督じゃなかったろ!?」

瀬戸ハヤテ:「(読みながら)セリフもだいぶこの、『アドリブ』『以下アドリブ』……」

伊達監督:『なんかかっこいいセリフ』とか書いてある。

永倉P:「てめえ!?」(笑)


RL:ではハヤテ。君の見ている台本? のオープニング、冒頭のところに、『突然、インターホンのベルが鳴る』と書かれているんだけれど。

瀬戸ハヤテ:(読んでいる)

RL:それを読んだ瞬間に、この社屋のインターホンが「ピンポーン」と。

瀬戸ハヤテ:一瞬ビクッとするけど、「……あ、役者さん! 役者さん来たんじゃないですか!?」

永倉P:「あん? いや、だから手配……」

RL:ドンドン、ドンドン、と戸を叩く音。

三人:(顔を見合わせる)

RL(扉の外の少女):「お願いします、助けてください!」――台本には、同じセリフが書いてある。

永倉P:「……二行、合ってるな?」

伊達監督:「ん? タカちゃんなにこれ、実践的なオーディション?」

永倉P:「……、」時計を見る。〆切を逆算する。インターホンを見る。

伊達監督:「タカちゃん?」

永倉P:「……康介。カメラ出せ」

RL:!!

伊達監督:「お? ああ、オーディションから撮るんだな?」

永倉P:「瀬戸、お前は役作れ」

瀬戸ハヤテ:「!?」

伊達監督:「――ハリー・バーリィは、探偵助手から探偵になった男だ。死んでしまった相棒が愛したこの街を守りたいという気持ちと、正義を愛する気持ちから探偵になったって男なんだ」

RL:「(扉の外から)『夜中にごめんなさい、お願いします! 助けてください!』」

瀬戸ハヤテ:「(監督とプロデューサーを見る)」


永倉が、覚悟を決めた表情で口を開く。


永倉P:「よし。――『撮る』ぞ」


伊達監督:「お?」この段階では『オーディションを撮る』っていう理解で「おう、撮ろう!」と軽く答える。「じゃあOK? 灯り、背景OK? よし―― アクション!!」


そんな気軽なキューサインで、この「撮影」は始まった。




※キャストイメージ画像

Picrew「遊び屋さんくん」遊屋ゆと様
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