Scene Player ―― “腐肉漁り”永倉 高利
Scene Card ―― カゲムシャ(正位置)
伊達監督:では、CMEのエージェントと死んだ男との待ち合わせ場所に、6時より少し前に行って、ウェストワードたちを待ち受けて迎え撃つって方向で。ハリー・バーリィの洞察力は、相手がそこにやって来るだろうことを読んでいた!
RL:かしこまりました。それではフェイズをクライマックスに移行できます。
永倉P:そこへ向かう車の中で1シーン欲しい。タタラ煮込み渡すの忘れてた。
RL:(笑)いいでしょう。いいシーンになりそうだし。後部座席にハヤテと、緊張した面持ちのエルシー。その前の、運転席の永倉プロデューサーと伊達監督のシーンね。
瀬戸ハヤテ:エルシーには、気持ちを落ち着かせるためってことでヘッドホンで音楽でも聞かせておこう。
永倉P:車で走りながら。「これから現場で、エキストラも集めてはおいた」
伊達監督:「さっすが、準備万端じゃん!」
永倉P:「で。――行けそうだな?」
伊達監督:「行ける。さっき、すげえいいシーンが撮れた。ヤバいやつが。監督人生の中でも1、2を争ういいシーンだ」
永倉P:「監督人生、そんな長くねえ癖に」
伊達監督:「中学校から数えりゃ、何作撮ったよ、一緒に」
永倉P:「まあ、そこから数えりゃな」
永倉P:「……久しぶりだな、お前がそんなふうなの」
伊達監督:「ああ。なんだか息を吹き返したみたいだ。次から次へと撮りたいものが湧いてくる」
永倉P:「さっさとメモれそういうのは! 昔っから言ってんだろそういうのは何かに書いとけって!」
伊達監督:「湧いてくるから大丈夫だよ!」
永倉P:「って前にも言われたの覚えてっからな俺は! そんで後から『なんだっけタカちゃん』って言われたのもだ!」
伊達監督:けたけた笑う。
永倉P:「『あん時は全部頭ん中にあったんだって』って何回あったと思ってんだ!」
伊達監督:「わかったよ、わかったよ! ……はは、こんな会話を車ん中でするのもすげぇ久しぶりだ」
永倉P:「……ほんとだよな。……ま、先ずは完成だ」
伊達監督:「感謝してるぜ、タカちゃん」
永倉P:「(しかめっつら)そういうこと言うな」
伊達監督:「なに。だってさ」
フロントガラスを流れ去る景色を見ながら伊達が言う。
伊達監督:「映画監督としてのオレを13年間見棄てなかったのは、タカちゃんだけなんだから」
永倉P:「……。……いや。いや。そ、そういうのじゃねえし」
RL:語彙が中学生に戻ってしまったw
伊達監督:「ああ、なるほどな。まだ早いってこったな? ちゃあんと完成させて、試写会には第一号にタカちゃんを招いてやるよ」
永倉P:「招くも何も試写だからオレが招待客を手配すんだよ!!」w
伊達監督:「ちげえよ。だから、招待客に見せる前に、誰にも見せる前に、タカちゃんだけに見せるってこったよ」
永倉P:「……クソ」
伊達監督:「最高に滾る作品が撮れてるからさ」
永倉P:「わかった。よし。……信じるぞ」タタラ煮込みを渡す。
伊達監督:受け取りながら。「やっぱりここは、4つ欲しいって言うべき?」
永倉P:「ねえよ。1つで充分だ」
ふたりはここでそれぞれフードのアウトフィット「タタラ煮込み」「バトルフード」を使用する。永倉はバトルフードの効果に「精神ダメージ」を選択。
運転席と助手席でジャンクフードを食べながら走るのも、13年ぶりのこと。
そのころ彼らを乗せて走っていたハヤテが、今は後部座席でふたりを見守っていた。
車は夜明け前のN◎VAを走る。ややあって、永倉がぽつりと口を開いた。