◆ エンディング:シーン24 ◆ 「ヘッド・ハント」


 Scene Player ―― “打ち上げ花火”伊達 康介

 Scene Card ―― イブキ(正位置)



RL:エンディングフェイズ最初のシーンはその美しい光の中で始まります。シーンプレイヤーは伊達監督。映画のラストシーンをどう締めるか、それを撮る場面から。

伊達監督:撮りたいシーンって意味だと、ヒロインと探偵の別れのシーンか、ヒロインが日常に帰ったシーンだよね。

永倉P:ふむふむ。

伊達監督:頭のいかれた映像屋としては、戦闘終了の後でヒッチコック御大みたいな鬼切りしても、もうヒロインの日常シーンを盗撮して繋げてもいいし。

永倉P:頭がおかしい!!w

伊達監督:主演としてはどっちがいい?

瀬戸ハヤテ:監督に任せるよ。これは監督の映画だからね。

伊達監督:瀬戸ちゃん良いこと言うじゃないの。


RL:ではちょうど6時になって、CMEのエージェントと千早冴子が、死んだ老監督との約束の屋上にやって来る。

永倉P:その前にジョシュと話しておきたいかな。

RL:了解。ではそっちをこのクグツのシーンにしようかね。


RL:ジョシュは「気絶」だったのでシーンが移って目醒めています。生かされた理由が分からないまま、ある程度諦めた顔で、どうとでもしろとばかりに膝をついています。

永倉P:「さて。アンタにとってはあまり状況は良くないわけだ。少なくともこれからCMEの人間が来る」

ジョシュ:「どうとでもするといい。俺は仕事に失敗した身だ」

永倉P:「あー。あのさ」

伊達監督:「(目をキラキラさせて永倉を見ている)」

永倉P:「分かってるよ! ちょっと待ってろ!」w


監督を手で押さえるようにしながら永倉はジョシュに向き合う。


永倉P:「お前、俳優だったんだよな?」

ジョシュ:「――……。昔の話だ。俺にはめぼしい役が付いたことすら」

永倉P:「で、さァ」

ジョシュ:「なんだ」

永倉P:「お前のことを監督が気に入ってさあ」

ジョシュ:「……は?」

永倉P:「そこにいる伊達監督が。知ってるか? 『リベンジ・キャット』。結城あや主演の」

ジョシュ:「ああ、13年前の…… 女の子の復讐譚」

永倉P:「おお、知ってるじゃねえか。あれしかねえけどな」

伊達監督:(笑)

永倉P:ふたりで笑って。

ジョシュ:「!」伊達監督を振り返る。「……あれが?」

永倉P:「こいつの作だ」

ジョシュ:「……、」目がちょっと泳ぐ。

永倉P:「いいか」

ジョシュ:「俺は一度業界を干された身だ。物真似しかできやしない。それに、……演技なんて、もう、ひとを傷つける手段でしかないと分かってしまった」

永倉P:「はは。……そこの、今の映画の主演はな」

ジョシュ:「ああ」

永倉P:「今回が初演だ」

ジョシュ:「!?」バッとハヤテを振り返る。

瀬戸ハヤテ:「すいません。ほんとにすいませんあの…… 大道具担当です」

ジョシュ:「冗談だろう」

永倉P:「金が無かったんだ」

瀬戸ハヤテ:「アクセルピクチャーズ大道具担当の瀬戸ハヤテといいます……」

ジョシュ:「……(ハヤテを指して)まさかこれが素か?」

永倉P:「そうだ。“ハリー”は虚像だからな。お前が演るはずだった役と、同じ名前の」

ジョシュ:「……そこまで知ってるのか」

永倉P:「たまたま名前が同じだっただけだが。"Congratulations, Harry"」

ジョシュ:「!?」どこまで知ってるんだとばかりに見る。

永倉P:「主演が決まって、おめでとう、だろ?」

瀬戸ハヤテ:「そのアイザックさんの娘さんが、」

ジョシュ:「待て。娘さんだと?」

永倉P:「ああ。エルシー。お前が狙ってたあの女の子。アイザックさんの娘さんだ」

ジョシュ:「……!」

永倉P:「(からから笑って)危なかったな」

ジョシュ:「……“映画みたいな下らねえこともあるもんだ”。(力なく笑う)」


永倉P:「で、だよ。うちの監督が」

ジョシュ:「ああ」

永倉P:「お前を」

ジョシュ:「ああ」

永倉P:「主演に」

ジョシュ:「は?」

永倉P:「映画を撮りてえって言い出しちゃったんだよ」

ジョシュ:「気でも違ってるのか!?」

永倉P:「違ってんだよ!!」

ジョシュ:「!!?」

伊達監督:「そうだよお前何言ってんだ、気でも違ってなきゃ映画なんか撮れねえ!」

ジョシュ:「何なんだお前たち!?」

伊達監督:「お前の履歴をオレのプロデューサーが調べた。オレはそれを見てピーンと来たね。『どんな俳優の代役でも出来た』。すげえ。お前、相当器用な腕を持ってる」

ジョシュ:「だから俺にはそれしか、」

伊達監督:「(無視)それで、オレには今ひとつ構想がある。『カメレオン』ていうタイトルで、7つの姿を持つ男。探偵か荒事屋か、なんになるかは分からねえが、そういう男を主人公にした映画が撮りたい。こんなことが出来んのはお前しかいねえ。オレはお前を撮りたい。お前にビンビン来ちまった」

ジョシュ:「面白いことを言う。だが、役者の頃の…… アイザックの相棒だった頃の顔も名前ももう捨てちまった。今ここにいるのは、あちこちの会社に恨みを買った、ヘイロンのスパイ崩れだ」

永倉P:「ってことで、お前はここで死んだことにする」

ジョシュ:「!?」

永倉P:「そうすりゃお前、また役者に戻れるよな?」

ジョシュ:「どういうことだ」

永倉P:「これからCMEさんとちょっとややこしい話をしなくちゃならねえが、お前の身柄をまず買うってことだ」

伊達監督:「何よりもだ。ジョシュさんよ、さっき『どうとでもしろ』って言ったよな?」

ジョシュ:「……う」

伊達監督:「どうとでも、していいんだよな? なら、オレの映画に出て主演を張れ!」

瀬戸ハヤテ:「伊達さんえげつな!」

伊達監督:「1本でいいってんだから温情あるだろ俺!?」

ジョシュ:しばらく口元を隠して黙っていてから肩を揺らす。「(笑っているような、泣いているような声で)……いかれてやがる。いかれた野郎ばっかりだ。映画業界なんて」

永倉P:「(にやりと笑って)よく知ってんだろ」

ジョシュ:「わかった。――二言はない」

永倉P:「よし、よし。じゃあ、ちょっとこのまま待ってろ」まず《不可触》を使ってこいつの過去を消す。こいつは出所不明の謎の新人俳優だ。あとは《買収》でどうやって千早にこいつの身柄を渡さずに済ませるか。

RL:神業持ちのキャスト、ゲストは基本的に《買収》では買えないもんね。

瀬戸ハヤテ:スパイはもう諦めて帰ったか、死んじゃったかってことにするとか。

永倉P:(《買収》の効果を確認している)企業や組織ひとつを買って、命令をひとつ聞かせる……。


永倉は最終的に、《買収》の対象に「CME映画部門」を指定。スパイについてはこちらで蹴りをつけたので「深く聞くな」、という命令を「ひとつ聞かせる」ことで、ジョシュを見逃してもらう結果を得た。



RL:CMEのエージェントや千早冴子とのやりとりはある程度省略できそうかな。

伊達監督:そうだね。

RL:エルシーが話をして、色々君たちが持ってる証拠も含めて、《真実》により事実であると太鼓判を貰って。本当にCMEに危機が迫っていたことが分かり、解決に対して真摯に礼を言われて、成功報酬も約束される。そのスパイはどうなりましたか、っていう話は《買収》でうまく交渉がついた。了解しました、これからも良い関係を…… となった後で、千早冴子が永倉プロデューサーを呼びます。ふたりで話がしたい。

永倉P:了解です。