Scene Player ―― “コンバット・シブチョー”高原 村雨
GM : シーン3。高原の場面です。
高原 : 明るいBGMが流れる中。
GM : あ、ちょっと変えるね。
あとり : (高原に)変えるって。
GM : 過去のシーンから入ります。
高原 : 私の過去って重いことしかないんだけど基本的に!
GM : (黙殺)はい侵蝕率。
高原 : 登場で5上がりました。
GM : 3年前のシーンです。場所は、あとりのシーン1と同じ所。葉山市のショッピングモール……の中、道端。相手のジャーム2体がが手強かったため、あとりみたいに見た目をごまかすとかそういう規模ではなく、一旦モールごと封鎖したことにしましょう。中で交通事故があったとか、そういうことにして。で、後処理をしています。
高原 : しとしとと小雨が降っていて……地面に広がっている血がこう、
GM : あ、ごめん。屋根あるって言っちゃった……
高原 : おーん!! し、しとしとと小雨が降っている、音が! アーケードの中に 聞こえるかー!!
あとり : き、きこえるきこえる!
FZ : アーケードの屋根を叩くぱたぱたぱた、っていう音が!
GM : よし、それ! わき道には屋根ないし、背景のそこだけは雨のカーテンが。
高原 : ぱたぱたって音がしていて……足下には血が広がっていて、ちょっと大きめの傘と小さい傘が、へし折られて転がっている。
GM : うわーー、いいねえ!
FZ : いいか!?
高原 : 血は屋内で、流れていくこともなく淀みのように溜まっている。
GM : じゃ、落ちてる傘の小さい方はよくある子供用の黄色い傘で、……開いたままなんだよね? 縁のところにひらがなで「3ねん2くみ みやなが まゆみ」と書いてある。
FZ : 宮永だった……。
GM : 調査してここに駆けつける、その間に受けた報告で、予測は大体ついていました。
高原 : 「……。(傘を見つめる)」
GM : あなたもそこそこ怪我をしていて、駆けつけてきたほかのエージェントにだいたいの状況を説明して、
高原 : 「人払いが事前にできていたのが……せめても幸いだった」
GM : 「ええ。……支部長のご判断が早くて助かりました」
高原 : 「なんの。……私たちはいつも、手遅れだ」
GM : 「……。支部長、お怪我が」
高原 : 「少しリザレクトが遅れているが、大丈夫だ。じき治る。……それよりも」
GM : と言った時、後ろのほうで「おい、宮永!」という声がする。
高原 : 「(ふり返る)」
GM : 脇道から入ってくる所で、駆けてきた宮永が、地面の血を見て腰が抜けてしまって、濡れた地面に膝をついて。連れて来てくれた同僚に二の腕をつかまれて支えられている。
あとり : ざー……
GM : そうだね。彼のいる場所では、雨が。宮永は愕然と目を見開いて、口をぱくぱくさせている。
高原 : 「……この光景を、見せることは少ない。見る者も少ない。けれど、……宮永さん。あなたが駆けてきたのなら、せめて心の内に弔いはしてあげてください」
GM : 君がそう言ったとき。……高原の後ろ、アーケードの下に、福祉タクシーに偽装した、ベッドを入れられる車がやってきててね。ジャームの骸は、ビニールシートをかけて、ちょうど職員がそこへ積み込んだ所で……その職員が、救急車の後ろみたいな所から乗り出して、「あ。宮永さん来てくれたか!支部長、宮永さん、乗ってください!」
高原 : 「よし、……現場の後処理は吉田に任せる」
FZ : (吉田)「はっ(ド低音)」
GM : 吉田さんが頼もしく応えて。
FZ : 将来さっきの渋い清掃班になる人。
GM : つながった!?
FZ : (吉田)「任せてください(ド低音)」
GM : 宮永はまだ動けない。車の人が、「宮永さん、付き添いと本人確認あるんで、お願いします!」
高原 : では、宮永に歩み寄って……距離はまだ少し開けたままだけれど、雨の当たる所まで出て、
GM : あなたの髪を雨が徐々に湿らせて、
高原 : でも、拳はまだふたりの血で濡れている。
GM : だね……。ややあって、宮永が「う、うわああ!」と声をあげる。あなたの体は、あなたの血とふたりの返り血で真っ赤だ。
高原 : 「宮永さん。……あなただけでも、乗ってあげてください。私は別の車を出します」
GM(宮永) : 「は、…(掠れた声で)…はい、 ……はい」震える足で何とか立ち上がって、同僚に腕を引かれて、
FZ : (同僚)「ほら、……行こう。宮永」
GM(宮永) : 「……はい。……はい」同僚のほうはあなたに頭を下げて隣を通り過ぎ、宮永に付き添って車に乗って。偽装車は出て行きます。
高原 : 「……。吉田」
FZ : (吉田)「はっ(ド低音)」
高原 : 「使うかは分からないが…念のため記憶除去装置を手配してくれ」
FZ : (吉田)「……、了解」
高原 : 「ただあくまで本人の意思に任せる」
FZ : (吉田)「……支部までは俺の車を使ってください」
高原 : 「助かる」
怪我をおして運転しようとした高原はエージェントに止められ、後部座席に乗って病院へ運ばれた。
数時間後、治療を終えて処置室から廊下に出ると、待っていたらしい人影がひとつ。
GM(宮永) : パイプ椅子から立ち上がって、「……支部長。」
高原 : 「宮永さん」
GM : 彼の姿は、たった数時間で10も20も老け込んでしまったように見える。顔色も悪い。でも、あなたの所に歩み寄ってきて頭を下げて「さっきは、……申し訳ありませんでした」
高原 : 「(首を振って、静かに)…当たり前の反応です」
GM(宮永) : 「(こちらも首を振って)それは、当たり前の人の場合のことでしょう。私もエージェントの端くれです。……分かっていました。仕方のない、……、(声を詰まらせる)…っ、(息を整えて)……こと、でした」
高原 : 「……宮永さん、」
GM(宮永) : 「(遮るように)辛い、……役目を。させてしまって、ご迷惑をおかけしました」
高原 : 「……大人同士ですからね。言えないこともおありでしょう」
GM(宮永) : 「いや、……いや」
高原 : 「しばらくお休みになるといい。手配はします」
GM(宮永) : 「(やつれた笑いを浮かべながら)私も、この年代のつまらないおじさんなので……。仕事がない日、家にいても何をしたらいいか分からないタイプの男なんですよ。だから、今日のことを、――あ、吉田さんからお話伺いました。お心遣いありがとうございます――でも、今日のことは……(間。息を吸い込んで)……忘れずに。研究に励みたいと思います」
高原 : 「……、」
GM(宮永) : 「あのふたりを、殺したのは。支部長じゃありません。……決してありません。レネゲイドにやられて、ああして発症してしまった時点で。あのふたりはもう……、…死んで、いたんです。ですから、どうか、」
高原 : 「…。結核が不治の病だったころ、よく聞かれた言葉だそうです。罹ったら、もう死んだものと思えと」
GM(宮永) : 「しかし、(顔をあげて、やや力強く)ストレプトマイシンは発見された」
高原 : 「……宮永さん」
GM(宮永) : 「はい」
高原 : 「お言葉は有難い。それでも……私は、自己正当化することは、できません。ただ、あなたがこの先もこの葉山市支部に力を貸してくれるというなら、心強い。あなたの無念で、……(静かに力強く)戦ってください。忘れることなく」
GM(宮永) : 「……はい」それを言われると、彼は何度も「はい」と答えて、あなたに右手を差し出します。
高原 : ……右手を差し出します。
GM : 洗われて汚れは落ちたけれど、まだ爪の内側とかは赤いのかもしれないね。そのあなたの手をぐっと握って。
高原 : 汚れまでは《リザレクト》で落ちないもんね。
GM : そうだね。
GM : ……と、そこで。夢のシーンだったことにしましょう。誰かに肩を揺すられて目がさめます。
高原 : ピョーン!!(両手を上げて飛び起きる)なああんだ夢かあ!
GM : そこまでテンション変えなくていいよ!?
高原 : じゃ、じゃあテンションは維持したまま、で?
FZ : それも辛いな!(笑)
GM : 支部長室にソファがあることにしましょう。そこで仮眠を…と思ったままかなり時間が経ったらしく、いつの間にか誰かにブランケットをかけられています。それを、宮永に揺り起こされました。
GM(宮永) : 「しぶちょー。(ゆさゆさ)カゼひきますよー」
高原 : 「はッ!(跳ね起きながら)あと五秒!」
GM(宮永) : 「(吹き出す)おはようございます」
高原 : 「あー、……(間)……宮永さんか。おはようございます」
GM(宮永) : 「お疲れですね」言う宮永も目がショボショボしている。
高原 : 「また最近帰っていないんでしょう」
GM(宮永) : 「あー、はは。いや、支部長こそ今何時だと思ってるんですか。いらしてびっくりしましたよ。もう朝ですよ。5時」
高原 : 「ごじ! ……いや、5時に目覚めるのは人間として正しいリズムだと思いませんか!」
GM(宮永) : 「支部長きのう帰りました?」
高原 : 「いやー、あの…… 昨日と同じ今日が続いているなあ」
あとり : (笑)
高原 : ちょっとテーマに触れて深いことを言いながら(笑)
FZ : 浅い!!(笑)
高原 : 「いや、しかし、(力強く)こうして目覚められて本当に良かった!」
GM(宮永) : 「目覚めない可能性あったんですか!? ……コーヒーでも飲みます?」
高原 : 「そうですね、あ、いや、私が入れますよ」
GM(宮永) : 「いえ支部長、」
高原 : 「コーヒー。コーヒーどこだったかな。(棚を)バーン!」
FZ : なんで腕力セーブしないんだよ!
GM(宮永) : 「自販機で買ってきます」
高原 : 「すみません。バーン!(閉)」
くたびれた大人ふたり、コーヒーでお疲れさま乾杯。
高原 : 「これから帰るところですか」
GM(宮永) : 「はい、今日の分がいちおう目処ついたので。支部長は?」
高原 : 「そうですね、こちらも……済むべき所はあらかた相浦くんが済ませてくれたから」
GM(宮永) : 「あー、……彼女、よくやってくれてますねえ」
高原 : 「ああ、たしかに優秀だといわれるのは分かる。あの歳であれだけ働けたら、欲しがる所は多いだろう。ただまあ、あまり雑用をやらせるのもよくないからね。バイトくんではないから」
GM(宮永) : 「そうですね。でも、やってくれちゃうんですよね彼女」
高原 : 「(うなずく)あまり仕事のゴミ拾いみたいなことはさせたくないが、ああいうボトムアップをしてくれる子がいると助かるのは確かだ」
雑談を続けながらコーヒーを飲み終え、施錠して支部を出るふたり。
高原 : 宮永さんは、家は外にあるんだよね?
GM : そうだね。家族3人で住んでいた家は広すぎるから、3年前、少し小さい家に引越しはした。
高原 : 今もメンタルケアを受けているとかそういうことは?
GM : 特にないね。仕事に打ち込んで忘れようとしたのかな。同僚の研究者たちははまだ少し彼に気を使うこともあるようだけれど、普通に頑張ってる。
高原 : そうか。じゃあ、私も家に帰って……魅惑のシャワーシーン。
GM : いや。
高原 : 魅惑のストレッチシーン。
GM : 37歳!(笑)
FZ : いらねえ(笑)
高原 : 魅惑のプロテインシーン。
GM : むさい! もういい!!
運ばれる遺体に目をやるふたり。短い沈黙が落ちる。