◆ Middle 06 ◆  「尾ひれを足に」


 Scene Player ―― “フェイタルゾーン”



GM : では、フェイタルゾーン。

FZ : 侵蝕値アーップ!(ダイスを振る)5!

高原 : 下がった。

GM : さがらない!


GM : では、フェイタルゾーンが…得意げに電話したら怒られて。

FZ : しょぼくれた所で。

GM : (笑)

FZ : 私は、宮永なり研究班の誰かなりが、他の人に情報を流したかどうか調べるべきだった。

GM : ふんふん。

高原 : そこに私が、「ただいまー!」って帰ってくる。

GM : うん。侵蝕率上げて。

高原 : 「ただいまー!」ダッダッダッダッ! 階段カンカンカンカン! バターン! 「忙しそうだな渡辺!」

FZ : 「おぁおおう!?(驚)」

高原 : 「ただいま!」

FZ : 「おおおお。お疲れさまです」

高原 : 「私が出てきた!」

FZ : 「はい」

GM : 完了形(笑)

高原 : 「一応話はつけてきたんだが、まだ何か私がやるようなこと残ってるか?」

FZ : 「あります」

高原 : 「あるのか! 実際!」

FZ : 「はい支部長」

高原 : 「うん?」

FZ : 「この写真見て」

高原 : 「この写真はー…映りが悪いな!」

FZ : 「うん」

高原 : 「そう思わないか!」

FZ : 「私もそう思うけれども、支部長」

高原 : 「これはー…」

FZ : 「“人魚の鉄姫(メタルマーメイド)”と」

高原 : 「まるで夜に……うん?」

FZ : 「“人魚の鉄姫(メタルマーメイド)”とー、」

高原 : 「彼氏か!」

FZ : 「うん、彼氏だったら話は簡単! その相手が、怪しい格好をしているだろう!」

高原 : 「そうだな。寒くもないのに」

FZ : 「まるで自らが誰か分からないようにしているようだ。これが誰かを調べる必要がある」

高原 : 「内海くんにはまだ連絡は取れていない?」

FZ : 「“光芒一閃(ブライト・ナイト)”がやっているようだが、まだ連絡はついていないらしい」

高原 : 「なるほど。じゃあ、これは私たちのほうでも当たってみた方がいいと」

FZ : 「ああ。それで、私は、研究者たちが……私たちがストップをかけるより前に誰かに治療薬のことを話してしまっていないか調べようと思う。それによっては、」

高原 : 「外部とのつながり……ということだね」

GM : じゃ、研究班からの聞き取りなり調査なりをフェイタルゾーンがして、怪しい人物についてを高原が調査、でいいかな?

FZ : うん。


GM : ではフェイタルゾーン、研究班の誰かがどうという話なので、技能はまた〈情報:UGN〉です。

FZ : うおおお、私の〈情報:UGN〉能力を見せてやる!えー……っと。

GM : そんなに難しくないよ。同じ支部にいる人に、会って聞くこともできるわけだから。

FZ : じゃあ、自分に《導きの華》を使って。一応、電話で訊きます。がんばれ私。私ならやれる。

GM : ゾーンが広がる!

FZ : ステイ!

GM : 広がらなくていいの!?(笑)

FZ : 私のゾーンは直径5メートル。[情報収集チーム]は使っておこう。これで、1+4+2で……固定値7。ダイス4個。

GM : なかなか心強いね。

FZ : はっ!(ダイスを振る)……9でた。16。

GM : たっかい!……研究員たちは、ほとんどの者がまだ班の外には話していないと答える。けれど、数人がもごもごと言いづらそうにしていてから、遠慮がちにあなたに言う。





GM(研究者) : 「確か、そのぅ……宮永さんが、対抗種の子……汐ちゃんていうんですけれど、その子のお姉さんには、心配させると悪いから、って、話していたと思います……」


FZ : 「……そうか」

GM(研究者) : 「目的を伝えたら、喜んでいたようです」

FZ : 「そうだろう。普通は喜ぶな」

GM(研究者) : 「汐ちゃんのほうには、あまり難しいことは言っていないようです。単純に、汐ちゃんのウィルスがみんなの役に立つ、とだけ知らせてあって、それは喜んでいたそうです」

FZ : 「そうなんだろうな。……そうか、分かった。これが問題になるかどうかはまた別の話だ」

GM(研究者) : 「う、でも、鞠ちゃんはそんなに口の軽い子では……」

FZ : 「そう願いたいがな。……そうだ、追加予算が下りたことは下りたそうだぞ」

GM(研究者) : 「え、本当ですか!」

高原 : 「まあ、何と言ったらいいが、思ったより出なかった! だが、そのあたりは日本支部も今、予算的に手一杯だということなんだろう。それでも、霧谷雄吾は喜んでいたし、引き出してもらうことには成功した」

GM(研究者) : 「ほんとですか! うわあ、それだけでも、報われた気持ちです!」

高原 : 「当面はそれでやりくりをしてもらうことになるな。申し訳ないが」

GM(研究者) : 「いやいやいや! ありがとうございます!」

高原 : 「みんなもあまり根をつめすぎないように。何分、デリケートなものを扱うわけだから」

GM(研究者) : 「そこは任せてください。寝ぼけて自分の頭は打っても試験管は落とさない連中なので」

高原 : 「気をつけてな!(笑)それじゃ、渡辺に話を戻すが、もう話すことないかもしれない」

FZ : 「うむ、ない!」

GM(研究者) : 「おつかれさまです!」





FZ : 「(電話を切る)……だ、そうだ。…姉に協力をしてもらうため、心配させないためということではあるが」

高原 : 「それ自体は悪い話ではないが……そうすると、この内海くんの写真がまたちょっと気になってくるわけだな」

FZ : 「そういうことだ」

高原 : というわけで、私はこの男……男? 女? この会ってる人に付いて調べたいんだけれども。〈情報:裏社会〉とか?

GM : それもいいね。あとは〈情報 :噂話〉。

高原 : ……とは言ったけれど裏社会持ってないんだよね。

FZ : 私が持ってる。順番間違えた気がする。

高原 : まあ、私は〈情報:噂話〉で振ろう。私は葉山市のことなら何でも知っている! 技能ないけど。

GM : がんばれ。がんばれ。

高原 : 市内の人間なのか、外から来たのか、あるいは他の所で活動してないかとか、何でもいい。

GM : うん、市の噂な情報収集っぽいね。

高原 : 私はそれを、ちょっと出て……だめだ退場しちゃう! 私は、ここで、ええと、ここで調べる! 固定電話なら使える!

FZ : 難儀だ……(笑)

高原 : 達成値6……いや、財産ポイント3点使って9もらおう。

FZ : 10にしといたら?

高原 : 財産ポイントがもう足りない。


【鞠が会っていた人物について】

 ● 男性。さほど大柄ではない。

 ● 市の『外から』移動して来ているのを目撃されている。

 ● 目撃証言は、「最近」「数回」。

 ● 所属組織は不明。ファルスハーツなどの大手(?)には該当情報なし。


高原 : (フェイタルゾーンに内容を伝える)「……市の外から移動してきているということになると、また少し怪しさが増してくる……内海くんが捕まれば彼女に問い質すことになるだろう」

FZ : では、そのあたり、今分かったことをあとりにメールで送っておこう。

高原 : 内海くんの休暇って?

GM : 明日まで。

高原 : 「明日いっぱい待つと少々悠長すぎるから…」今って何時くらい?

GM : そろそろ日が暮れるかな。日本支部に行ったりしたもんね。

高原 : 「悠長すぎるから……明日の朝までに連絡がなかったら、少し強行的に探し始めてしまおう」

FZ : 「ああ」

高原 : 「……そうだ渡辺、あれは調べたか。例の……治験の。渡辺がやったらどうなるかという」

FZ : 「ああ、それはまだです」

GM : それは情報を聞くのに判定の必要がないから、ここでホワイトハンドの担当医さんなりに連絡できたことにしてしまっていいよ。



 フェイタルゾーン、市内の関連組織にいるお医者さんに電話。



FZ : 「もしもし。急に私がオーヴァードでなくなったらど…どう思う?」とか微妙な話の振り方を(笑)

GM(医師) : 「は!? ……え、何言ってんの渡辺さん?」

FZ : 「いやその、急に私がそうなったらどうなるか試算してみてくれると嬉しいなーって」

GM(医師) : 「え、え?」

FZ : 「そうだったらいいのにな的なアレで」

GM(医師) : 「え、やめたいの? オーヴァード」

FZ : 「うーーん……」

GM(医師) : 「ああ、まあ、やめるやめないって話じゃないよね、はっは」

FZ : 「うん、やめるやめないっていう……」

GM(医師) : 「治んないもんねえ」

FZ : 「う……う、うん…(うしろめた汗)」



冷や汗をかきつつも、フェイタルゾーンは、

もし何らかの理由で自分がサイバーレッグを外したいと言ったらどう思うかと医師に尋ねた。



GM(医師) : 「そらちょっとまずいよ、渡辺さん」

FZ : 「……まずいか」

GM(医師) : 「足っていってもね、渡辺さん、あんたの足、ただの義肢じゃなくて……あれでしょ? すごい移動力上がるやつでしょ?」

FZ : 「お、おう」(笑)メタいぞ先生。

GM(医師) : 「あのね、渡辺さん。足ってさ、ここ(股下)から先だけで動かしてるわけじゃないんだわ」

FZ : 「何だって?」

GM(医師) : 「例えばねえ……太ももの筋肉ね、触ってみ。このへんなんかも一部は骨盤の下のほうからくっついてるし、臀部の筋肉や腱なんかも入れると……ちょっと自分の脇腹に手ぇ当ててみて」

FZ : 「うん。(触る)」

GM(医師) : 「すぐ下に腰骨の一番高い所があるでしょう。そこら辺まで行ってるわけ」

FZ : 「そうなのか…」

GM(医師) : 「背骨の下方から、骨盤内通って骨盤の前側に来てる筋肉もあるし、神経も脊髄から繋げて来てるし」

FZ : 「そうだよな」

GM(医師) : 「目的によって個人差あるけど、とりあえず、あんたの場合はそこまでやってあるわけ。だから……手術で外すっていうのは、正直ちょっと、できるだけやりたくない。身体の中に傷がつきすぎる」

FZ : 「あー……」

GM(医師) : 「で、それこそ発電ができなくなったとか、なんかで接続切れちゃったとかで全部動かなくなった場合。脚を外す外さないはとにかく、まず上半身を自分で起こすことから辛くなる」

FZ : 「おおおおお……そうか」

GM(医師) : 「脇腹から下は感覚なくなると思って」

FZ : 「うおー……」

GM(医師) : 「だから、そういうことになると大変だから。あんまり無茶はしないでね」

FZ : 「はい。きをつけます」

GM(医師) : 「どこか調子が悪いんだったら検査おいで? 何かあったなら、話も聞くよ?」

FZ : 「い、い、いや。今のところ好調なんだが、ふっと気になった!」

GM(医師) : 「そう?」

FZ : 「じゃ、また」



 フェイタルゾーン、携帯電話を切る。



FZ : 「支部長」

高原 : 「うん」

FZ : 「かんばしくない結果が」

高原 : 「かんばしくない!」



 ひとしきり説明。



高原 : 「……大変だな!」

FZ : 「うーん」

高原 : 「じゃあ、ちょっと……ダメかもしれないな!」

FZ : 「私ももうちょっと簡単に考えていた。それとな」

高原 : 「うん」

FZ : 「私が治験体になる・ならないの話の場合は、自分の意思だからありとしても。さあ、世界中よーいどんで全員治療しましょうとなった時には」

高原 : 「『捕まえて治療薬を打て!』と」

FZ : 「そうそう。そういう段階に入ったとして。その日に突然その人が起き上がることすらできなくなる、とかいうことが起こるわけだ」

高原 : 「UGNもできるだけのケアはしたい……が、オーヴァード能力を失ったUGNにそこまでの資金的な力も厳しいかもしれないし、全ての人に補償を出せるかというと」

FZ : 「難しい」

高原 : 「だから……渡辺さんは30代半ばで大変なことになると思うが」

FZ : 「支部長、支部長(笑)いや、その通り。実にその通り。……なかなか心が折れるような結果が返ってきたな」

高原 : 「私のほうも霧谷に聞いてみたんだが、やめたほうがいいよとは言われた。やめてほしいよ的な事は」

FZ : 「まあ、支部長は引き止められる側の人間だろう」

高原 : 「支部長だしな。……支部長やらない?」

FZ : 「何を言ってる!!(笑)そんな簡単に譲れるもんじゃないだろう!」

高原 : 「……その通りだ。」



 沈黙。



FZ : 「……。支部長。私は、少なくとも“コンバット・シブチョー”のことを、かなり」

高原 : 「前々から殺してやりたいと」

FZ : 「ちがーう!(笑)……有能で、私が私の上司に仰ぐのに相応しい上司だと」

高原 : 「よせよ、照れるだろ!(背中ばしばしばし)」

FZ : 「いだいいだいいだい!! キュマイラが叩くな!」

高原 : 「……よせよ、照れるだろ……(両肩をぎりぎりぎり)」

FZ : 「痛い! 割れる! 私が!」



 聞いてあげてください。



FZ : 「だからー! ……できれば、“コンバット・シブチョー”から…」

高原 : 「普通シブチョーに」

FZ : 「なれないだろう?”シー・ウィッチ”を打ったら、一般の人間になってしまうんだ」

高原 : 「レネゲイドレス・シブチョーになる」

FZ : 「いないわけでもないかもしらんが、少なくとも、説得力は落ちる。それに、二度と『私が出る』とは言えなくなるぞ」

高原 : 「言えなくなるな。それに、支部長が《人形遣い》を喰らったりなんだりするのは非常に好ましくない」

FZ : めんどくせえ(笑)

高原 : 「一日中抗ワーディングマスクをつけて暮らすというのもあまり好ましくない」

FZ : 『《ワーディング》! あ、支部長が倒れた!』

GM : もうヒロインだそれ(笑)

FZ : 『う〜い。バタン」

GM : 『支部長がマイナーアクションでマスク装備するまで《ワーディング》張るなって言っただろおぉ!』

FZ : 「まあ、であるから……できればやめてほしい。と、とりあえず部下からは言っておく」

高原 : 「霧谷としては、できるだけ説得力のある実験体のほうが望ましいということだったから、……例えば、そのへんから謎のジャームを捕まえてきて治療薬打って、ハイ! 元気な一般人に! とかはちょっと好ましくない」

FZ : 「(笑)もっともな話だ」

高原 : 「実績のある人間がやるというのもある意味ではアリかと思ったんだがな! ……まあ、やめて欲しいといわれてしまった以上は難しい。相浦くんの意見も聞きたい。そして、内海くんのこともだ」

FZ : 「そうだな」

高原 : 「……正直な所、あまり若い子を実験に使うというのはやりたくないが」

FZ : 「私が、と、やはり言いたい所だが……さすがに少し尻込みしてしまったな」

GM : あとりを交えてその話、する?

高原 : うん。意思確認と……相浦くんが能力を失ったらどうなるのかということを。

GM : 彼女についてのそれの問題は、君のほうがよく知っているかもしれない。非常に優秀なチルドレン、未来のUGNに必要な、将来の支部長として育てられている人材であるということ。君は、彼女が君の支部に配属されてくる段階でそれを知っている。

FZ : 今までに分かったことをあとりにメールして、来るように連絡する。……ということで次のシーンに繋げる(笑)

GM : OK。それじゃあ次の……うん? あとりがここに登場してもいいのか?

FZ : 侵蝕率的に、それだと嬉しい。

あとり : 登場する。(侵蝕率ダイスを振る)


高原 : 「つまり、全ては相浦くんと内海くんの双肩にかかっているというわけか!」

あとり : かちゃり。

高原 : 「あ。相浦くん」

あとり : 「はい」

高原 : 「内海くんとその後連絡は?」

あとり : 「ないです」

FZ : 「こちらは……芳しくない結果が出た」

あとり : 「どちらが……ですか?」

FZ : 「少なくとも宮永氏は、姉である鞠に、“シー・ウィッチ”の件を。妹に協力をしてもらう関係で、既に話していたらしい。治療薬ができるというようなことを」

高原 : 「この写真に写っている人物については……男だね。支部の外から移動してきている。何回か目撃されているようだ」……私は内海くんから、外部に知り合いがいて、というような話は聞いていないよね?

GM : 一切聞いていない。

高原 : 「というわけで……怪しい。一刻も早く内海くんに連絡を取りたい所ではあるんだが。それはそれとしてだ!」シャッ!

FZ : 「私の写真だ! 机を滑らせるな!」

GM : (笑)

あとり : シャーッと滑って、しゅるしゅるしゅる。向こうの壁にドスゥ!!

高原 : 「それはそれとしてだ!」

FZ : 「支部長!!(写真を引っ張っている)」

高原 : 「コンクリートだぞ。大変だな」

FZ : 「あんただ!!」

高原 : 「それと。……例の件を進めていくには、やはり治験が必要だということだ。最初の1人を決めないと一歩も進まない状況だ。この市には4人、オーヴァードがいるわけだが。相浦くん的には……どうだい」

FZ : 「支部長、その言い方だと、勧めているようだ」

あとり : 「構いません」



 あとりのあまりの即答に、奇妙な間が落ちた。



高原 : 「構わない」

あとり : 「ただ、一つだけお願いが」

高原 : 「……弟くんのことかい」

あとり : 「はい。……ご存知でしたか」



 沈黙。



あとり : 「カウンターレネゲイドの持ち主が問題なく治療できるようであれば、最優先の治療を」

高原 : 「……『最優先』は約束できない。本人の意思の問題があるからだ。弟くんは君の所有物ではないからね。だから」

あとり : 「当人が望むのであれば。そして、当人への情報は包み隠さず。判断材料がなければ、その判断もできません」

高原 : 「相浦くん、あの。くれぐれも誤解しないで欲しいのは、『弟くんの安全は全力をかけて守ってやるから、その代わり君が治験者になれ』という流れではないんだ」

あとり : 「はい。分かっています」

高原 : 「……。普通の生活は……楽しそうだと思うかい」

あとり : 「楽しいかどうかは分からないですけれど、送れないことはないと思います」

高原 : 「女子中学生としてやっていくことになると思うけれど……もし成功すればね。または、部分的にでも能力を失ったら」

あとり : 「はい。(顔を上げる)」

高原 : 「……。……弟くんのことは、私が守る」

あとり : 「お願いします」



 あとりは静かに頭を下げる。



あとり : 「高原支部長が、約束を守ってくださる人なのは知っています。……短い間でしたけれど、」

高原 : 「3週間かー……」

あとり : 「はい」

高原 : 「まあ、死ぬようなことを言わないでくれ!」

FZ : 「本当だ(笑)今のはなんか死ぬ間際のようだ」

高原 : 「い、いいかい相浦くん。別にレネゲイドがなくなっても支部に顔出してくれていいし、電話もしてくれていいんだからな!?」

あとり : 「あ、そ、そうじゃないです! だから、高原支部長が! すごく誠実な方で、信に足る人だということを知っていますという、」

高原 : 「よせよー!(背中ばんばんばん)」

あとり : 「いたいですいたいですいたいです」

FZ : 信に足るけど面倒くせえこの支部長(笑)

高原 : 「……弟くんのことは必ず守る。それで彼が犠牲になるということは、ない」

あとり : 「……はい」

高原 : 「相浦くん。……オーヴァード人生、どうだった?」

あとり : 「……」

高原 : 「そんな難しいことじゃなく、総括してぱっとこう」

あとり : 「……『いい経験になったと思います』?」

高原 : 「……優等生だな君は」

GM : (笑)

高原 : 「まあ、ポジティブな言葉ならよかった」

あとり : 「きっと、あの。……ひょっとしたら、将来的に『ああ、まだあの力があったらな』って思うことはあるかもしれないですけれど。でも、それって結局、どんなものにも言えるんじゃないかなって」

高原 : 「どんな、なくなるものにも」

あとり : 「(うなずく)」


高原 : 「……内海くんの休暇は明日一杯。一応、内海くんの連絡を明日まで待とう」

FZ : 「支部長。それは、場合によっては、既に何かしらの計画が進んでいて、明日には準備が終わるということなのかもしれないぞ」

高原 : 「内海くんが外部の誰かと接触していて」

FZ : 「ああ。既に戻ってくるつもりはないのかもしれない」

あとり : 「……」

FZ : 「『かもしれない』だ。可能性の話をしている。外部の人間と接触していて、その人間の正体が分からない以上、私は少なくとも疑ってかかるべきだと思っている。彼女の気持ちとして、妹のために何かしてやろう……もしくは共に人間になりたい、という考えなのかもしれない。悪意はないのかもしれない。『かもしれない』だ。だとしても、まず捕捉に全力を注ぐべきだと思う。善意は期待したい所ではあっても」

高原 : 「……。今夜一杯、内海くんの捜索にあて、いや……」

あとり : 「外部に漏れているかもしれないのであれば、するべきは研究の護衛でしょう」

FZ : 「まともに探して見つかるとも思えなくはある。空間操作能力者だ」

高原 : 「ということは、G……GT? GTS」

FZ : 「GPSか?」

高原 : 「それだ。GPS!」

FZ : 「GTSってなんだ」

高原 : 「GPS的に探そう。一発だ!」

FZ : 「……。どうやって?」

高原 : 「いや……ほら、GPSを使えばいいんじゃないのか」

FZ : 「支部長、GPSが何だか知ってるか?」

高原 : 「よく分からないけどよくみんな言ってるからあの……パソコンとかでできるんじゃないのか?」

GM : パソコン万能だと思ってる!(笑)

高原 : 「最悪の事態を想像するなら……内海くんの身の安全を考えなければ。それから……汐ちゃんだったか。彼女の身の安全も」

FZ : 「場所預かってるの私だからな。施設のほうには私が行こうか」

あとり : 「鞠ちゃんが誰かと会ってるなら、施設の場所もばれてません?」

FZ : 「その通りだ。そうなるな」

高原 : 「内海くんがどういうことを外部の人間と話していて、内海くんにどういうメリットがあるのか、正直分からないところではある」

FZ : 「恐らく、妹を治したいのではないかとは思う」

高原 : 「とにかく内海くんと連絡が取りたい。その一環として、渡辺が言っていた施設へ彼女を探しに行く、あるいは休暇のうちに寄っていないかと聞きに行くというのはありだろう」

FZ : 「治験者の選出は、一刻を争うというものではない?」

高原 : 「それほどの性質では、」

GM : ではそこで電話がかかってきてしまおうか。「もしもし、支部長!」



 電話の主は研究員たちだった。

 “シー・ウィッチ”の投与の……最初の治験の準備が整った、という。



FZ : 「急いだほうがいい、か」

高原 : 「彼らも彼らなりに焦っているのと、……こちらを試しているのが半分ずつだろう」

FZ : 「そうだろうな」

高原 : 「正直な所、ここでアールラボの信頼を損ねたくない。ある意味彼らはこちらに対して最高のジョーカーを握っている」

FZ : 「……。(溜息)同時進行にするべきか。何、私ならば、外に出ている間に何か起こってもそれなりに早く駆けつけることができる」《猫の道》的なそのあれで。…イージーエフェクトこんな便利でいいのか?

GM : 登場しないほうがいい場合は登場不可って言うし、判定が必要なときはさせられるし、特にデータ的なボーナスがあるわけでもないから、いいんじゃないかな。イージーエフェクトは、今まで〈RC〉なり〈知覚〉なり、普通の技能で判定していた所で、演出をシンドロームらしくできたり、PC間で役割分担が生まれたりするためのものかなと私は思ってる。

高原 : 「よし。外へ行くのは、渡辺が。その上で、内海くんの行方も探っていこう」

FZ : 「了解」

高原 : 「相浦くん」

あとり : 「はい」

高原 : 「振り回すような感じになってしまってすまないし……正直な所、2〜3週間くらいはあげたいんだが……」

あとり : 「大丈夫です。…それこそ、あの人たちのやる気とか、信用とか、そういうものを殺ぐわけにはいかない」

高原 : 「……君はちょっと、人のために生きすぎてる」

あとり : 「いえ。結局それは、いずれ自分のためです。……そうでしょう」



 微かに笑ってみせるあとり。



高原 : 「中学生なんだから、もっと即物的でいいんだぞ!」

FZ : 「……(渋い顔で)このあたりが、彼女が『優秀』だと言われる所以なんだろう」

あとり : 「それこそ、申し訳ないと言えば申し訳ないのは、……高原支部長が『一番後ろ』になってしまうことです。『最初』を私がもらってしまうから」

高原 : 「そこらへんは気にするな! うまく行くかいかないかも分からんし、もしかしたら、あれだ、打ったら死ぬかもわからん!」

あとり : 「そうですね!」

FZ : 「いや、そこは明るくやりとりする所じゃないぞ!?」

高原 : 「……彼らも、焦っている」

あとり : 「もし、私が死ぬようなことがあったら……ここであったこの決定の事実を、弟にはちょっと、ひた隠しにしたうえで色々お願いできますか」

高原 : 「……(うなずく)」

あとり : 「お願いします」



高原 : …エンジェルハイロウ/バロール……か。

あとり : ?

高原 : 死んだと思ったけど気のせいだったぜ系のエフェクトはないか。

全員 : (笑)

GM : タイタスでも、死亡しちゃったらだめになったしね。

あとり : 《抱擁》だったら生き返れるよ!オーヴァードじゃなかったらだけど。

GM : でも、《抱擁》受けるとオーヴァードになるかもしれないんだよね。

FZ : まあ、治験の結果、オーヴァードじゃなくなったけど死ぬかもしれないから、

あとり : なるほど、そうしたら《抱擁》で生き返って、おお、オーヴァードになった!

FZ : ……オーヴァードになったぞ?



高原 : 「薬というのはなんだ、こう……やばそうだったら殴り込むというのができないから嫌だな!」

FZ : 「?」

高原 : 「ほら、今にも相浦くんがやばそうだったら、あぶなーい! カバーリング!! …というようなことができないから」

FZ : 「ああ」

高原 : 「……(胸のもやもやを撹拌するような仕草)……気が気でない!」

FZ : ああ、心配なのか(笑)

高原 : 「支部長をやってみる気はないか!」

FZ : 「未来の支部長候補生、だろう」

高原 : 「いや、明日から」

FZ : 「明日から!? ……それで自分が被検体になると?」

あとり : 「え……?」

FZ : 「薬王寺結希という、やはり14歳くらいで支部長になった子もいたが」

あとり : 「彼女はノイマンです」

FZ : 「ああ、そうか」

あとり : 「だから、……彼女も、もしこの薬で能力を失ったら、ただの高校生になってしまう。……あるいは、ただの高校生よりも辛い状態に」



 重い沈黙。



高原 : 「……なあ、やっぱり私行っちゃダメかなあ」

FZ : 「ダメだ。……正直、どうなるのかはわから」

高原 : 「ヤだいヤだい! 私が行きたいやい!(じたばた)」

FZ : 「しぶちょう!?」

高原 : 「……というのが本音だ!(息切れ)……本音だが!」

あとり : 「オーヴァード能力を失うことによる問題点として」

高原 : 「……え、難しい話をするか?」

あとり : 「はい」

FZ : 「支部長、引くな(笑)」

あとり : 「その人自身に関わる問題と、周囲に関わってしまう問題があるんですよね。高原支部長は周囲に関わる問題がすごく甚大だし、場合によっては自分に関わるものも。フェイタル・ゾーンさんの場合は、自分に関わるものが大きすぎる。だから、ほら。そうしたら私が一番いいんです」

GM : 本人は周囲の期待の度合いを聞いてないかもしれないからなあ……。

高原 : 「4人しかいない以上、消去法的な決め方になる。それが一番理性的だ」

あとり : 「はい」

高原 : 「なんか、その、理性というものを……殴りたくなってこないかね」

FZ : 「あのなあ(笑)」

あとり : 「(笑)……困るのは、殴りたくなる対象が、理性ではなく……研究成果になってしまうことです」

高原 : 「……」

あとり : 「正直、その気持ちがないとはいえないと思います。もう少し遅ければ。今じゃなくても。そういうのはきっとあると思います。でも」

高原 : 「研究員を犠牲にするようなことにはしたくない。彼らのうちの何人かは、今回の件でUGNを見限ることもあるかもしれない。結果によってはね。……それでも、彼らの家族は何らかの形で、守ってやりたい」

あとり : 「……私は、治療はレネゲイドを『殺す』ことだと思っています。だから、治療については、レネゲイドに対して……言って許されることではないけど、ごめんね、としか。今まで……色々あったけど、助けてもらって、いっしょに来たけど……もういっしょにはいられないの、って」

GM : ほうほう、そういう考え方か。

高原 : 「そこまでレネゲイドを擬人化して考えられるのは、君たちの世代からなんだろうな」

FZ : 「うむ……」

高原 : 「レネゲイドビーイングも、今まで以上に我々に干渉してきている。だから、君が協力してくれる治験も、場合によっては実績がそのまま破棄されるかもしれないが、」

あとり : 「(うなずく)」

高原 : 「……治験者は相浦あとりだ。私が判子を捺す」

GM : おおお。

FZ : 「……了解。では、こちらは任務につくぞ」

あとり : 「渡辺さん」

FZ : 「ふおおおお!!」

あとり : 「あ、フェイタルゾーンさん」

FZ : 「うむ。よし」

あとり : 「……鞠ちゃんのこと、お願いします。それから、鞠ちゃんの妹さんも」

FZ : 「彼女のことは、できるだけ何とかするつもりだ」と言って汐を[Sロイス]に指定。

GM : おお、了解。

高原 : 「(壁を指さす)写真も持っていきなさい。例の、不審者と一緒にいる」

FZ : 「ああ、それはもちろん。……ていうかなんで投げた!!」