Scene Player ―― “コンバット・シブチョー”高原 村雨
GM : では、シーンプレイヤーは高原。場所は地下の研究所、さっきの情報を手に入れた直後……なので、さっきのフェイタルゾーンのシーンと同時進行くらいの時間軸で。
高原 : 登場侵蝕値は4。メールは受け取ってる?
GM : さっきフェイタルゾーン、時間置いていくつか送ってるもんね。では、今ちょうど最初の、「宮永 施設にいる」のメールを受け取ったとしましょう。
高原 : その携帯メールを、職員さんに開いてもらってたところ。
GM : さっきのさ、拳をぎりっと握り締めた直後のシーンなんだけどな!?
高原 : 「……(重々しい声で)誰か、メールひらける方いらっしゃいますか」
GM(研究者) : 「まだ開けないんですか支部長!? ここの……ここ2回。ここ2回押すだけです」
高原 : 「(拳を構える)」
FZ : グーパンはちょっと!!
GM(研究者) : 「……はい。どうぞ」
高原 : 「……宮永さんには、帰って寝るように言ったんだね」
GM(研究者) : 「ああ、はい」
高原 : 「だいぶ参っていたふうだったかな」
GM(研究者) : 「え、どっかでぶっ倒れたとか連絡来ました!?」
高原 : 「……注射したものは」
GM(研究者) : 「え?」
高原 : 「相浦くんに注射したものというのは……それはやはり、血流に乗って体を巡ってしまうものかい」
GM(研究者) : 「しまうって、いや、そうじゃないと」
高原 : 「そうだな。そうじゃないと困る」
GM(研究者) : 「はい」
高原 : 「抜くとしたら、瀉血のような形になるかな」
GM(研究者) : 「抜く!?」
高原 : 「いや、私も医療は専門外なんだ」
GM(研究者) : 「支部長、何の話をしているんです!」
研究員の両肩をぐっとつかみ、真正面から目を見る高原。苦痛に満ちた声で言う。
高原 : 「……落ち着いて聞いてくれ。……宮永さんが。……」
GM(研究者) : 「どうしたんです。何があったんですか」
高原 : 「何かを、隠している」
GM(研究者) : 「え、……」
高原 : 「(うなずく)」
GM(研究者) : 「何か、って……」
高原 : 「廃棄されたマウスが」
GM(研究者) : 「さっきの話のあれですか」
高原 : 「あれは、何が起こって、何のために廃棄された」
GM(研究者) : 「えっ……」
高原 : 「宮永さんはなぜ焦っていた」
GM(研究者) : 「俺たち、その廃棄の話からさっき初耳なんです」
高原 : 「だが、……ぼろぼろになったマウスはいたんだ」
GM(研究者) : 「……そ、それ……って」
高原 : 「いいか。これは最悪の想像だ。私は、そうでなければいいと、本当に心の底から思っている」
GM(研究者) : 「は、はい」
高原 : 「それでも。……いいか、これは支部長命令だ」
GM(研究者) : 「はい」
高原 : 「……中止だ」
GM(研究者) : 「え、」
高原 : 「宮永さんに問い質す。いいか、これは実験の中止ではない。研究の中止でもない。今回の、この……治験の、中止だ」
GM(研究者) : 「(気圧されて)は、い……」
高原 : 「彼女を早く! 術はないのか!」
GM(研究者) : 「考え、ます! おい、みんな!」
GM : 研究者はあとりのいる部屋へ、同僚たちの所へ走っていきます。
高原 : 「……っ!(廊下の壁に、前腕から拳にかけてを叩きつける)」
GM : 力の制御を超えた感情が壁に叩きつけられて、壁の塗料がぱらぱらと剥がれ落ちる。
高原 : 「宮永さんの電話番号を控えている者は、電話で連絡を試みなさい。出たら私に代わってくれ。出なければ、留守番電話に何か残す必要はない。それで彼にも分かるだろう。……いや、待て、留守番電話に残しておけ。『投薬は行った』と」
GM(研究者) : 「分かりました」
GM : 何人かが廊下に出て行って連絡を試み、何人かはあとりの周囲の計器をチェックする。「心拍は?」「血圧は」「異常ありません、……今のところ」
FZ : そのあたりでメールがもう一通。
GM : 「内海汐、施設脱出。恐らく、宮永洋平が共にいる」……研究者たちは、半ばパニック状態で輸液だの透析だの濾過だのの機材を持ってきたりしています。
高原 : 手の空いていそうなひとりのところへ歩いていって、「(強い声で)君」
GM(研究者) : 「はいっ」
高原 : 「メールは打てるか」
GM(研究者) : 「は、はい!?」
FZ : ダメな奴のほうが珍しいわ!(笑)
高原 : 「すぐにメールを打ってほしい。このメールに返信してほしいんだ」
GM(研究者) : 「はい……な、なんて打ちますか」
高原 : 「『引き続き追ってくれ。私の力が必要になるだろう。折を見て合流しよう』」
GM(研究者) : 「はい……はい。送りましたっ」
高原 : 「ありがとう」……パニックになっている皆の方へザッザッと歩んでいって、パン! と一度強く手を叩く。《ワーディング》。
GM : おおっ!?
高原 : それで研究員たちが……ハッと己を取り戻す!
FZ : え、え!
GM : 取り戻すの!? や、いいや、戻す!(笑)
FZ : 解くの、その後?
高原 : 解く。(笑)
GM : 全員が息を呑み、凍ったような一瞬の後。《ワーディング》が解除されると、普通の人よりはかかり慣れているんだろう、あ、という顔で支部長のほうを見る。
高原 : 「すまない。全員まとめて殴れないから、荒っぽい手を使った」
FZ : あぶないところだった!!
高原 : ピュアブリードだからやろうと思えば取れるんだが。「《増腕》!」
GM : ええ!(笑)
高原 : 本当に絵ヅラが危ないところだった。
FZ : 本当だよ!
高原 : 「ひとつひとつ、やり方を確認していこう。今のところ、彼女には影響は出ていないそうだね」
GM(研究者) : 「はい。そのはずです」
高原 : 「睡眠には4時間以上かかるということだったね。注射した血液は、こう、結構早く全身を巡っていってしまうものかね」
GM(研究者) : 「約1分です」
高原 : 「約1分。今から腕をちぎっても遅いということだね」
FZ : 腕ちぎる気だったんか!!
GM : そこまでの……というのを感じ取って、研究者たちが息を呑む。
高原 : 「私が考えているのは、最悪の事態だけだ」あとりに近寄っていって。「中和剤のようなものは作っていないんだね」
GM(研究者) : 「はい……、中和する性質のものではありません」
高原 : 「そうか」
GM(研究者) : 「し、支部長。失敗例があったのを、宮永さんが隠していた、っていうことですか」
高原 : 「私はそれを疑っている。怖い話じゃないか」
GM : 研究員たちは青い顔を見合わせる。
高原 : 「書面上のデータでは間違いなかったわけだね」
GM(研究者) : 「はい……、申し訳、ありません……」
高原 : 「いや、責めているつもりはない。私も目を通して分からなかった。“リヴァイアサン”さえ、目を通して『ありうる』と言った。――他言無用だよ」
GM(研究者) : 「は、はい。理論に……あの理論に、ミスは……」
高原 : 「100%は、常にない」
GM(別の研究者たち) : 「ブラム=ストーカーのオーヴァードの支援を要請しますか?」「いや、もう組織に入り込んでいるだろう。血液だけをどうにかしても……」
高原 : 「まずは原始的な手段から行こう。冷水を」
GM(研究者) : 「ちょっ、ちょっと待ってください!」
FZ : 原始的すぎる!(笑)
GM : 手段を探すなら、〈知識:医療〉か〈知識:レネゲイド〉で判定。君が判定して、『研究者たちにやらせる』演出にしても構いません。
高原 : じゃあそれで。〈知識:レネゲイド〉かな。
GM(研究者) : 「向こうの部屋のマウスたちは、耐え切った。その彼らの体に、何かヒントがあるかもしれません」
高原 : 「よし、それでいこう」
GM(別の研究者) : 「私たちは、残っている“シー・ウィッチ”を分析して、何か打ち消す手段が無いか調べてみます!」
高原 : 「そうすると、冷水はかけなくていいんだな!」
GM(研究者) : 「やめてください」
高原 : 「科学で何とかなるのなら、それが最もいいんだ。けれど、それでどうにもならない時は、原始的な手段だとか、生命力の強さだとか……レネゲイドの強さだとか、そういうものを信じてみる」
GM(研究者) : 「はい……」
高原 : 「君たちの戦いはまだ終わっていない。君たちに、できることを」
GM(研究者たち) : 「はい!」
GM : 何人かずつが別の部屋へと走っていく。あとりは静かに眠っている様子。ではここで一旦閉じて、あとりのシーンに移行します。次に回ってきたシーンの頭で、調査の判定とその結果をやるね。
高原、短い書面を無言で見つめる。