◆ Crymax 01 ◆  「塔の上の姫君」


▼ Part.B − 戦闘セッティング





 高原、金属の壁の前に立ち、両手の指先をその表面にあてる。



高原 : 「――開けるよ」

FZ : 「……了解」

高原 : ……キュマイラにこういう怪力系のイージーエフェクト欲しいんだけどね! ブレカナの岩石割りとかのような!

GM : あー、アルシャードの剛力無双とかね。いいよ、やっちゃっていいよ!(BGMを変えながら)

あとり : ?

GM : (音量調節しながら)音楽くらい明るくしとこうね……

高原 : 音楽「くらい」っていった!

GM : 派手目にしとこう。……では。皆の目の前で、壁が……熱い飴細工のように、金属の壁に裂け目が入って左右にぐにゃりと押し広げられていく。CG合成の画面のようだが君達には紛れもない現実。それが証拠に、開ききられたくしゃくしゃの壁はその歪な形のまま、嘘のように硬く凍りつく。

高原 : 壁が縦に、上の方まで裂けるようにしたい。

GM : OK。まるで扉を押し開くかのように。その向こうに広がる空間に……高原とフェイタルゾーンが先ほどあとりに伝えてもらって思い描いた風景、組みかけの鉄筋の物騒なジャングルジムが、色を持って現実化する。

GM : 中央の高い柱の上。縦に伸びる細い鉄骨の束の一本に足を置いて、ふわ、ふわと揺れながら、立っているのは……汐。

FZ : 「……そこか」

GM : では、配置をするね。周囲にいま破ってきた囲い、30m四方。ここに建てかけビル、20m四方で、左奥側が一部欠けて……たぶん駐車場か何かのスペースにするつもりだったんだろう、それのせいで、全体はL字型。真ん中へん、L字の折れたところの内側に、例の中央の柱。

あとり : 真ん中の柱までは15mの距離。

GM : そう。そのジャングルジムのあちらこちらが、苦しげにぐぐぐっ……と曲がったり、床部分に張りめぐらされた鉄筋が、ぐにゃり、ゆらりと波打ったり。その下のコンクリートから、ぼこぼこと地中の鉄筋やワイヤーが沸き立って跳ね上がったり。今しがた高原の起こした非常識な映像に勝るとも劣らぬ光景が、君たちの目前で展開されている。

高原 : 「……ここ、全体が」

GM : そうです。鞠の成れの果て。水のように泳いでいた金属に、同化して、取り込まれた。



 想い叶わなかった人魚姫は。

 あぶくになって溶けて消え、異形の姿に成り果てた。



GM : そして、中央の大きな、太い柱。その根元には、鉄骨のぐにゃぐにゃに曲がったものや、太いステンレスワイヤー、あるいはうごめく鉄筋が、大樹の足もとの根のように、わらわらと溜まっていて。そのあちらこちらが、触手のように縮んでは伸び、歪み、曲がり、びたん、びたんと地を叩いて暴れている。

FZ : むむ……。

GM : ここ全体が鞠ではあるんだけど、それだと戦闘相手としてややこしいから、データ的に該当する箇所としての鞠の位置はここ(中央の柱)とします。中枢というか、そういう。

高原 : 私たちからは15mの距離。

GM : そう。そして、汐はその上にいるんだけれども……ごめんね、今回ちょっと3Dになっちゃうのね。

高原 : 縦というか、上方向があるということね。

GM : そうなの。中央の柱までは15m、汐はその上、地上から5、6m……ってあんまり高くないか。派手に10mにしてしまおう。

あとり : 高ぇ!

GM : 10mの高さ。ただし、“上方向”なので。[飛行状態]、あるいはそれに準ずる特殊な手段を取らないかぎり、汐のいる柱の上への移動はできません。

高原 : 上方向には。

GM : はい。下からでも、[射撃攻撃]は届きます。鞠と汐は別のエンゲージとして扱います。

高原 : 離れ過ぎている。

GM : それ。

あとり : 「……魔女の薬に、声も取られてしまったの?……“人魚の鉄姫(メタルマーメイド)”」鞠へのロイスをタイタスに変化。

GM : 了解。……その答えなのか、そうではないのか。たくさんの鉄の触手が、物も言わずに地を叩く。

高原 : 「こんな陸の上だというのに……踊っているのは鉄だというのに。まるで、海の中のようだ」



 3人のオーヴァードは、異形の海の中、それぞれが一歩前に出る。




あとり : 「せめて、あなたの妹は助けたい。邪魔をしないで」



FZ : 「“塔の上の姫君(ラパンゼル)”は、何とか助ける。それくらいは望んでもいいはずだ」



高原 : 「……今行くぞ、内海くん」



GM : 3人それぞれが決意の言葉を口にした瞬間。触手じみた金属たちが一斉にぶわっと跳ね上がって、ビタン!と地面を叩く。大地が揺れる。足下に、波のように、鉄筋の揺らめきが伝わってくる。一瞬遅れて、非常に強力な“因子”が突風のように押し寄せる。……全員、衝動判定を行ってください。〈意志〉判定で、目標値は9。

あとり : 〈意志〉20。

GM : 揺るがないな!

高原 : 〈意志〉12。

GM : おおお。高いな君ら。

高原 : 〈意志〉2レベルと[思い出の一品]。

GM : あ。君が最初に殺した友人の……!

高原 : 友人の、何なのか結局決めてない。

GM : 決まってないの!? モザイクかかってんの!?

高原 : き、切手! 切手を集めるのが趣味だったことにしよう。それをお守りみたいな感じで財布に忍ばせてある。

GM : お、おう。よかった。よし。

FZ : 〈意志〉……9。9でた。

GM : あぶ……危ない! やったね! では、フェイタルゾーンの場合は……吹き寄せた鞠の“因子”、高原のワーディング、それらに対抗しようとするかのように、あなたのゾーン……半径2.5m、直径5mの真円の縁がびりびりと波打つ。が、

FZ : 「ステイ! ……私の領域は、半径2.5m。それでいい」[解放]衝動を抑え込みます。

GM : 高原。突風のような“因子”と、(バチン、と両掌をぶつける)あなたの《ワーディング》のぶつかり合い。その一瞬、胸の中に明るく熱いものが灯りそうになるのを、

高原 : ぎりっと奥歯で噛み殺す。「……自分のために戦っているのではないはずだ」

GM : いいね。そうして[闘争]衝動を抑え込む。……あとりは[妄想]衝動か。

あとり : 「ずっと、考え続けていたのだけど。……やっぱり、まだ、失くすわけにはいかないみたい。……大丈夫。みんなここにいる」……同時に、……Sロイスを弟に設定していい? 鞠と汐に重ねてしまう。

GM : おー、いいよいいよ。君の弟、相浦イスカ。汐と同じ、対抗種。君を失えば、ああして独りになるだろう子供。……では、侵蝕率が2D10上がります。

あとり : 16上がった。

高原 : じゅうろく!?

FZ : いくつになった。

あとり : 105。

GM : え゛っ!

あとり : 最初からフルパワーでいける!

高原 : あるあるある。

FZ : 7。

高原 : おお!?

GM : いくつ。

FZ : 87。

GM : あっれ、20くらい差ついた! 登場そんな変わらないよね!?

FZ : あれ、高原さりげなくすごい高い?

高原 : うん。……7点! 103!

GM : うわわわ!

あとり : ふたりフルパワー状態!

高原 : かなりポジティブに戦えるね!



 だまらっしゃい。



GM : さあ、これから“力”を使うとなると。君たちの身体の中で、レネゲイドが改めてなお君たちの細胞を書き換えていく。

高原 : 獣化というほどではないけど、筋肉がぐぐぐっと盛り上がって……ヒゲが濃くなるとかしたらやだな。

GM : そんなリアリティはいいよ! ちょっとはファンタジーでいいよ!!

高原 : 筋肉がぐぐぐっと盛り上がっていく。それにあわせて、短く整えてある爪が、ガキガキガキッと伸びて。

GM : おおお。……《ワーディング》は誰が張る? 彼女らは張らない。

高原 : 私が張ろう。

あとり : 宮永さん大丈夫かな。

GM : 何らかの対策は取っているだろう。

高原 : では、《ワーディング》。獣の闘気がばっと周りに広がって……

GM : おおっ。

高原 : 研究員たちはハッと己を取り戻す。

GM : まだいたの!?



 いません。



 この後、行動値を確認。

 あとり(17) > 鞠(15) >汐 (11) > FZ(10) > 高原(3)。



GM : あとり早! 次に、特殊ルールというか、環境的な影響を説明しておくね。空気の中に、先ほどの鞠の因子とはまた違う、喉の焼けるような何かが混じっている。

FZ : あー、

GM : うん。広範囲に拡散しているのでダメージは落ちますが、『内海汐』が特に何も――何かでくるんだり、シーンから放り出すとかね――されない状態でこのシーンに存在するかぎり、毎クリンナップに、シーン内の全てのオーヴァードおよびジャームは全員1D10のダメージを受けます。汐も、カウンターレネゲイドで返るダメージ分、つまり3点を喰らいます。

高原 : 実ダメージ? 軽減はできない。

GM : うん。

あとり : そのダメージは、1回に与えているもの? ばらばらに与えているもの?

GM : お?

あとり : つまり、汐ちゃんは、3ダメージを、ダメージ与えた人数と同じ回数受けちゃう?

GM : あ、あ、それはない、だいじょぶ。対抗種がシーン攻撃した時と同じに、3ダメージを1回だけです。

あとり : OK、OK。それなら……最低7ターンは死なない!

高原 : んんん(笑)HPは最低23はあるもんね。

GM : え、そういうこと?(笑)う、うん、一応PCと同じ作成方法でデータ組んでるから、いきなりHP15とかはいわないよ。