◆ Crymax 01 ◆  「塔の上の姫君」


▼ Part.D − 第2ラウンド



GM : セットアップフェイズ、でいいかな?こちらからはひとつイベント。抗ワーディングマスクをつけた宮永が、囲いの中に現れる。

FZ : 私の横?

GM : いや、ちゃんと囲いのこっち側(右側の一番手前)にある入り口を開けて入ってくる。

高原 : 人間らしく。

GM : そうだね。……そして、ここに歩いていって。

高原 : L字型の麓。角の外側。

GM : うん。……そして。君たちが……ひとりの姿は見えないけれど、後のふたりがまだ立っているのを見て、ちょっと苛立ったような顔をして、懐からアンプルを取り出す。先端を折って……ぴゃっと手を一閃する。と、粗い霧状に振りまかれた“シー・ウィッチ”が、鉄筋の隅、“鞠”の体の一部に少しだけ触れる。と、そのあたりの鉄筋がばたばたばたッ、と暴れ狂う。その揺れが波及して、柱もぐらぐらと揺れる。



FZ : 「……活性化……? いや、痛がっている? これは……(考え込む)」



あとり : 「何の真似ですか」

GM(宮永) : 「そろそろ、こちらの時間は良いのでね。移動をさせて頂きたいので……早めに片付けるように、拍車を入れさせてもらいました」

FZ : 「(眉をしかめる)」



GM : では、最初のイニシアチブ。……行動値トップ、あとりのメインプロセス。

あとり : GMに確認。イージーエフェクトって、どこまで効果があっていいかな。

GM : お。何がしたいか言ってご覧?

あとり : 《天使の絵の具》。この場所全体の風景を描き変える。中央の鉄柱を、本来揺れているのとまったく違う揺れ方をさせる。

GM : 汐を落としたい、ということ?

あとり : 足を踏み外させたい。対決するなら〈RC〉と〈知覚〉、このエフェクトには、緊張時には使えないという一文はない。

GM : ん〜……面白い。面白いけれど、イージーエフェクトには、具体的なデータを変える・データ的な影響を与える能力はないとしたほうがいいと私は判断する。今回の場合なら、戦闘中の位置を変える・距離を変える、というのは不可能。

あとり : 分かった。宮永は、攻撃能力を持っている?

GM : 持っていない。敵ボスですが、エキストラです。君が殺すと言えば死にます。

あとり : 了解。じゃあ次。エキストラに、他者にとどめをさす能力はない?

GM : ない。とどめをさすには、1点でもダメージを通さなければいけないからです。

あとり : ありがと。……フェイタルゾーン、遠くの相手をカバーリングしたり、ダメージを軽減することはできる?

FZ : できないな。

あとり : わかった。えーっと…… これは聞けるのかな。

GM : なになに?

あとり : 相手が使ったエフェクトのレベルって聞いていい?

GM : ものによるだろうけれど、いいよ。

あとり : 汐の《異形の祭典》は何レベルだった?

GM : 3。

あとり : [LV+1]体。4体まで殴れた。でも殴らなかった。そうか。錯乱して全員を撃っているわけではないな。それならこれだ……撃つ。



 あとりは、自分が鞠の手を止めさせた後、汐が彼女ににとどめをさしてしまうことを懸念していた。



あとり : 「――まずは、止めます!」……周囲の光を集めて、鞠に対してレーザーを撃ちます。組み合わせは“ヘル・アンド・ヘヴン”。

GM : 判定直前。汐から《ジャミング》。ダイスが、今は……3個減る。君の身体を、内側から外側から、じくじくと蝕むカウンターレネゲイド。耐え難い痛みが集中を乱す。

あとり : 「……大丈夫。この痛みに、泣き言は言えない」



 汐は、そしてイスカは……弟は、いつも味わっているはずの痛みだから。



GM : おおおおお。

高原 : ……GM、合気チットが配りたいんだけど。

GM : おう。おう。(こくこく)

あとり : あ、でもダイス止まった。14……技能足して19になるかな。

FZ : 最後の《妖精の手》。4のダイスを10に変える。

あとり : あいよ! 20……30……クリティカル値も下がってるんだっけ。

FZ : うん。さっきの《解放の雷》で6。

あとり : じゃあ、……40……45。技能を足して49。《導きの華》で53。

GM : ほにゃーーー!? か、回避! ……無理!

あとり : ダメージ。……57点。

GM : むりむりむりむり!

あとり : もう一度、囲いの角が真っ黒に染まって。本来見えているはずの壁がぐにゃりと歪んで見えて……光を曲げて、撃ち放つ。

GM : い、一応、《隆起する大地》。今度はさらに強固に、ステンレスワイヤーと、どこまでも伸びる鉄筋の束で中央の柱を巻き上げる。
その螺旋は柱の天辺を越えてとぐろを巻き、汐の上からかぶさるように天井を作って、汐はその鉄の塔の窓からフェイタルゾーンを見下ろす形になる。そしてその塔を、あとりの超オーバーキルレーザーが……

あとり : ギュン、と……じゃあ、曲げたから、レーザーが、剣のように塔を薙ぐ。切り裂くように。

GM : いとも容易く、水流を薙ぐかのように、レーザーの刃が塔を切り裂く。塔は一旦、斜めに切れ目が入って真っ二つになり、上の部分がズズズッ……とずり落ちかけて。途中で、真っ赤に焼けたその断面どうしが溶接されて接合する。塔は、ずれたまま、倒れることなく固まった。……けれどそれで、この鉄筋のお化けは。海に消えた“人魚の鉄姫(メタルマーメイド)”は。これまでの金属の波立ち暴れる様子が嘘のように、シンと固まって動かなくなる。



あとり : 「……」



GM : 突然の静寂。塔からワイヤーの砕片が落ちる、カキン、という小さな音が耳に刺さった。

あとり : 「……まだ、楽にはしてあげられない。全部、返してもらう、から」

GM : 塔の姿はそのまま固まったことにしましょう。データとしては、鞠は[戦闘不能]になります。

FZ : ……ここからだ。



GM : イニシアチブ。次は、汐。……[待機]。

FZ : ……お?

GM : ぼんやりとした目ながらも、フェイタルゾーン。君を見ている。次に行動値の高い人……フェイタルゾーンだね。



高原 : ……GM。“あらゆる行動が行えず”だから、オートアクションもできないよね。

GM : うん。そうなんだよね。……あ。気づいたね? 汐のほう。

高原 : ……(もごもご)

GM : 高原の設定を活かさせてもらった点だから、悩みどころではあるんだけど……

FZ : お?

高原 : ……(じたじた)



FZ : マイナーアクションで戦闘移動。「……膝が笑ったりは……しないんだ、私の脚は。私の思うがままのところへ運んで行け!」鉄筋の網の上を、磁力を発生させて蹴りながら走る。

GM : カン、カン、カン……

FZ : 15m。とりあえずまずは塔にエンゲージ。

GM : 見上げる塔は、絵本のような、というよりは、悪夢のような。鉄筋とワイヤーの蔓細工。途中で斬られて、ずれた塔。その上から、真下に走ってきたあなたから目を離さず、汐が見下ろしています。編まれた鉄筋で作られた即席の、塔の上の小部屋から。

FZ : 「さあ、考えろ。どうする、私……」

GM : 前のラウンドで言ったように、メジャーアクションで調べられるよ。

FZ : しかしな……調べていると、このクリンナップであとりが倒れるんだ。

高原 : ……(じたじた)



GM : ……高原。タイタスをひとつ使う覚悟があるのなら、オートアクションを1回行っていい。



高原 : ……“あらゆる”行動が行えないという不利な状況を、一瞬突破するわけか。

GM : そうなる。やや特殊な処理になるけれども。やるかい?

FZ : タイタスか……きついだろう。

あとり : こっちが1回死ぬのは構わないよ。大丈夫だよ。

高原 : 叫びたい台詞はあるんだけど……

FZ : 残りのロイスいくつだよ。

高原 : 4つ。1つタイタス化して使えば3つ。

あとり : うへえ。

高原 : ……“フェイタル・ゾーン”渡辺三郎へのロイスをタイタスに変換。

GM : おおおっ!?

高原 : 昇華して。オートアクションを一度行います。演出はこっからやる!

GM : はい!

高原 : ……鉄筋の隙間から、顔が……え、犬の鼻面が?

FZ : ブフ!?(吹いた)

GM : トリュフ探してる豚か!

FZ : この今際の一言を言おうとしてる演出の時に! トリュフ探してる豚て!

高原 : じゃあ、こうしよう。鉄筋の構造物全体がズズン……と揺れて、震えて。

FZ : 「支部長……?」

高原 : 鉄筋が、響くような、反響するような、声を出す。

GM : 先ほどまでのた打ち回っていた鉄筋のお化けが、物言わぬ鉄の絡み合うオブジェになり。それが一度、静寂の一瞬後に、ズン……と大きく震えて。響く、声!



高原 : 「……私は。……残酷な支部長だ。君も今は、残酷なエージェントになれ、“フェイタル・ゾーン”!」



FZ : 「支、」



高原 : 「時間が無いのは! 私か、“塔の上の姫君(ラパンゼル)”か、どちらだ!」



FZ : 「……!!」



高原 : 「手を伸ばせ。あの髪を掴め。彼女を助けてやれるのは、麓にいる君しかいない。塔の上の姫君(ラプンツェル)には……こちらから上らなければ、逢いには行けないんだ」



FZ : 「……支部長」



高原 : 「いいか。私を救おうとするくらいなら、彼女に時間を与えてやってくれ。死者が、生まれることよりも――ジャームが生まれることを怖れるんだ。君の……ロイスを」



GM : ……力尽きたかのように、彼の声が消える。

FZ : 「……了解」



 フェイタルゾーンの声は、今までで一番低く、夜気に染み渡った。



FZ : 「……迷ったな。迷いすぎだ」



 両手で額の髪をかき上げる。塔を見つめる、鋭い瞳。



FZ : 「全く情けない話だ。欲張りになれと、上からチルドレンに言っておいてこのざまだ」



 異形の塔の高みの少女に、突きつけるように右手を差し出す。



FZ : 「“塔の上の姫君(ラパンゼル)”。髪を下ろせ。王子が迎えに来たぞ。そこから連れ出してやる」



 知らないはずの物語が、彼の口から流れ出す。



FZ : 「世界は。……お前が思うより、ずっと広くて良い所だ」



GM : 彼女の目にふっと光が灯る。唇が震える。けれど彼女は、鉄の小窓の桟をぎゅっと掴む。



GM(汐) : 「“ばかな おうじ、ばかな おうじ。いばらの とげは、いたいだろうよ”」



 彼女の台詞は、姫のではなく、魔女の台詞。



FZ : 「私は、そのようなものに負けたりはしない。必ず、姫君。お前をそこから救い出すぞ」



 スーツ姿の機械の王子は、言い切った。



GM : ……分かりました。では、こち……あ、フェイタルゾーンのメジャーアクションがまだか。

FZ : メジャーアクションしていいなら、高原を助けるほうのヒントがとても欲しいけれども!

GM : (笑)いいよ。頭がフル回転し始めて、ふと思いつくのかもしれない。

FZ : いい? やった! よし、それじゃ……〈知識:レネゲイド〉!

GM : では、あなたは、自分と彼女の台詞の……

FZ : (小声)ら、ラプンツェルの話全然知らないで適当なこと言っちゃったんだけど大丈夫かな。

GM : え、すごい! 大丈夫、だいたいあってる!

高原 : (うなずく)だいたいあってる。

GM : “いばらの とげは”という言葉がふと引っ掛かって……

FZ : よし、(ダイスを握る)

あとり : 忘れるなよ。達成値は4点上がるからな。

FZ : そうだ。そしてクリティカル値は1点下がっている。……ちょっと待ってね、確かめるね。これで実は“『攻撃の』クリティカル値が”とか書いてあってぎゃーってなって死ぬかもしれないから

GM : しぬの!?

高原 : ……というかんじで塔の下でエージェントが七孔噴血して死んだわけだけれども。

GM : やめて!? 生きて!?

あとり : 大丈夫大丈夫、“次に行うメジャーアクションの”って書いてあった。

FZ : 大丈夫だった。(ダイスを振る)……回った! 12、技能で13、《導きの華》の+4で……17!

GM : そんな鬼のような目標値設定しないよ!?(笑)……成功です。

FZ : 「茨の……棘……?」

GM : もしかして……汐のウィルスか。

FZ : 「……そうか!」

GM : 解除の手段は『内海汐のカウンターレネゲイドの直接投与』。方法は色々ある。汐に殴らせる、彼女の体液を取り出して注ぐ、あるいはそれが含まれたものでも。



FZ : 「“塔の上の姫君(ラパンゼル)”の、体液なり組織なり……ウィルスの含まれたものの投与が、鍵だ!」

あとり : 「拡散したものではダメ……であるならば、直接投与」

FZ : 「そうだ!」

GM : では、クリンナップ……

あとり : の前に、[待機]の子。

GM : あ、そうだ。ダブルクロス3rdの[待機]の子は、皆の行動が終わった後に、遅い人から動く。

あとり : 汐に殴らせたくは、ないな……

FZ : まだ、アンプルがあるだろう。宮永から奪って、中枢に投与すれば。

GM : エキストラだしね。奪うと言われれば抵抗はできません。

あとり : 戦闘移動22m……では、宮永の所まで届かない……。

FZ : ぐぅ!

GM : やや!? とりあえず、[待機]の子に行動させるね。内海汐。ちょっと痛いのはごめんね、フェイタルゾーン!


◆ コンボ : “ラパンゼルの涙”

 〈白兵〉+《伸縮腕》+《妖の招き》


GM : 三つ編みを、君へと伸ばす。

FZ : ……エンゲージに寄せるつもりか!

GM : そうだね。[射撃攻撃]だから届く。

高原 : エグザイル、か、そうか!!

GM : ……実はダメージ通らないと引き上げられないんだけども。痛くてごめん。

高原 : 大丈夫だよ! 元の話の方だって、王子めちゃめちゃ腕痛いだろうし、ラプンツェルもめちゃめちゃ頭皮痛かったって!

あとり : 死なないようにね。今回は《異形の祭典》の−10ないからね。

FZ : だ……大丈夫大丈夫、死体は少なくとも上に上がる! 戦闘不能の私がア゛〜って上に。

GM : 王子ーー!?

高原 : 王子の亡骸が塔の上に(笑)

FZ : さいあくだ! 絵ヅラが最悪だ!(笑)

GM : 達成値は……15。

あとり : 回避は?

FZ : しない。

高原 : ガードは?

FZ : ガード値ない。両腕を広げる。「……さあ来い!」

GM : ダメージ。[対抗種]入っちゃうから……4Dプラス……今は、9。

FZ : 確実にダメージは入るから大丈夫。4Dのダメージが6を超えると死ぬから気をつけて。

GM : 難しいよ!? ……26。

FZ : あ、装甲値で8点減らせるんだ。18くらって……HPは残り15だった。

GM : あ〜!

FZ : えぶァ。

GM : 何か、何かこっちにできることはないのか! オートアクション技は《ジャミング》と! ……《自動触手》。

FZ : ダメージ!(笑)

高原 : 引き寄せるラプンツェルは美しいけど、自動触手ラプンツェルはどうなんだ(笑)



GM : では。鋼の塔の上から、するするするっ……と三つ編みが長く伸びて、

FZ : 「そうだ! お前の意思は……お前を閉じ込めている者の意思を、超えることができる!」宮永洋平へのロイスをタイタス化、昇華。[戦闘不能]から復活。

GM : そうだね、[戦闘不能]になった直後に使わないといけないんだよね。

FZ : あと今使わないと本当に遺体がずるずる上に上がる(笑)

GM : じゃあ、……フェイタルゾーンが伸ばした腕に向かって、するすると三つ編みが降りてくる。そしてその腕に絡みつく。その瞬間、腕がジュウッ! と焼ける。カウンターレネゲイドね。

FZ : 一度私が死ぬ。

GM : うん。

FZ : しかし、さっきの台詞を言って再起。その髪をぐっと握り返す。

GM : すると、三つ編みがヒュッと君を……

FZ : サイバーレッグでガンガン駆け上がろうか。

GM : あ、その方が面白いね。そうしよう。……髪が君を引っ張る力に合わせて、

FZ : 「よし、行け、私の脚!」

GM : 引き上げようとしたけれど、汐は体重が軽すぎて、あなたの重みで窓からぐらりと落下しかける。

FZ : 「間に合え、私の脚! こういう時のための《サイバーレッグ》だ!」

高原 : 磁力の脚の王子が、鉄筋の塔を。

GM : 近未来ラプンツェルにもほどがある!

FZ : 「うおおおお! 32歳と9歳はまずい!」ガンガンガンガン!

あとり : いらん台詞言うな!(笑)

GM : 駆け上がる!君が窓の下までたどり着いた時、ちょうど、耐え切れなくなった汐がふわっと落ちてくるのを、

FZ : 「そや!」(体当たりするように抱え込んで)窓の中へ!

GM : 塔の中へ、ごろんっ、と!



 ふたりは塔の小部屋に転がりこんだ。



高原 : よし!

あとり : クリンナップになるんだけどね……!

GM : そうか。汐からの1D10ダメージ、(ダイスを振る)……6。

あとり : 倒れる。……うぅ、どうしよう。フェイタルゾーンには鞠にとどめをさす能力は無いよね。

FZ : うん、ごめん。

あとり : 解放できれば支部長が殴れる。でも……

FZ : 支部長に殺させたくない?

あとり : うん。でも、行動値は先に彼に回る。そうしたら、あの人は自分が殺すよね……。

高原 : 「フン、手柄を譲ってほしいのか?」

GM : だから誰!?

FZ : そこは何とか働きかけて頑張れ! 支部長も、半自動的に相手を殺しますマシーンではないだろう!(笑)

あとり : でも、だからこそあの人は自分で背負う……!

高原 : ソンナコトナイヨ。闘争衝動抑えてるよ。

GM : そこ!?

あとり : ……えい、迷った時は感性に従え! 宮永洋平へのロイスをタイタスに変換。感情“不安”だったんだけど、不安どころじゃなくなってる。昇華して、[戦闘不能]を回復。「……大丈夫」

高原 : 瀕死だったはずが、再びHP11で立ち上がる。

あとり : 「……あの子にも、嫌な思いはさせられない」

FZ : 「……全部、背負うつもりか」

あとり : 「“欲張り”ます」

GM : ……うをーー(じたんばたん)