◆ Ending 01 ◆  「赤い花ひとつ」


 Scene Player ―― “コンバット・シブチョー”高原 村雨



FZ : 「(深い安堵の息)」

高原 : 「助かった」

あとり : 「……ご無事で」

高原 : 「一時は死ぬかと思った」

FZ : 「いろいろ申し訳ない」



少しだけ笑いあう3人。背広の上着をかぶったままの汐。

3人の視線が、自然と彼女に集まった。



高原 : 「……最良とはいえない。だが……彼女を守ることができた」

FZ : 「支部長、……彼女は」

高原 : 「まずは日本支部と掛け合うことになるかな。面倒事としては、うちの支部の人間が彼女を連れ出してしまったことになるから」

FZ : 「……確かに」

高原 : 「ただ、ずいぶん渡辺になついているみたいだから」

FZ : 「うん? ……う、うむ」

高原 : 「まだ、オルクスシンドロームとカウンターレネゲイドは……」

GM : だだもれ。

高原 : 「空気が痒い感じだね」

あとり : 「……正直、しんどいです」

GM(汐) : 「(しゃがんで上着をすっぽり被り、前を閉じなおしてタケノコみたいになる)」

FZ : 「大丈夫。大丈夫だ」

高原 : 「渡辺がいつも君の面倒を見てやるというわけには、残念ながらいかない。だが、」

FZ : 「非番の時の楽しみができた」

高原 : 「……(ややあって、穏やかに少し笑う)いいことだ」

あとり : 「?」

FZ : 「いやあ、実は今まで、休日に、きんぎょの水槽と部屋の掃除以外にやることがなかった」

あとり : 「えっ……」

高原 : 「それは、すごく、よかったな」



高原 : 「彼女は引き続きUGNの施設で……あの施設で保護されることになるだろう。ただ、もう少し我々が出入りしやすいように……特に渡辺が出入りしやすいように、多少掛け合いはしよう。だいぶ彼女に関わってしまったし、そういう存在を持つのは、オーヴァードにとってはわりと良いことのはずだ」

GM(汐) : 「(涙声が残ったまま)“どうぞ、わたしも、ごけらいにしてください”」

FZ : 「ようし。きび団子をやろう」

GM(汐) : 「(タケノコがうんうんとうなずく)」



あとり : 「……支部長」

高原 : 「ん?」

あとり : 「彼女は、……お姉さんを失っています。その件、」

高原 : 「……分かっている」

あとり : 「余計なことを吹き込まれてしまったことも。決して、彼女は、お姉さんを殺したわけではないと」

高原 : 「……それは、……難しい。難しい問題だからな。……汐くん、だったか」

GM(汐) : 「?」

高原 : 「……いや。もう9歳か」

FZ : 「すぐ大人になれるぞ」

あとり : 「……フェイタルゾーンさん、それ」

FZ : 「ん?」

あとり : 「ひかるげんじけいか……く?」

FZ : 「いやいやいや。正直、親子ほども歳が離れている」

高原 : 「汐くん」



静かに語りかけた高原を汐が見上げる。



高原 : 「……人生というのは、とっても辛いことでできている」

GM(汐) : 「……」

高原 : 「ただ、君には渡辺がいるし、君の力になりたい人間たちはいる。そのことを、忘れずにいてほしい」

FZ : 「うむ」

高原 : 「君には辛いことがあったし、これからもあるだろう。だが、……だがどうか、彼らのためにも、私たちのためにも、笑顔を忘れないでいてくれないか」

GM(汐) : 「……(うなずく)」

高原 : 「悲しいことがあったら、渡辺に言え」

FZ : 「うむ。言え」

GM(汐) : 「……(鼻をすすり上げて)……“ゆきましょう、ゆきましょう”」

FZ : 「うむ。そういうことになった」



 通じているのかいないのか、うなずき合うふたり。



高原 : 「……人の心が悲しみに出会うと、苦しんでいる時に、それでも懸命に人を想ってこぼれるひとしずくが、どこかの山で花になるんだそうだ」

GM(汐) : 「……?」

高原 : 「“やさしいことを すれば 花がさく。いのちを かけて すれば 山が うまれる。うそでは ない、ほんとうの ことだ……。”というのを私は昔読んで、独文科に行こうと思った。ノヴァーリスの『青い花』という小説があって、私は、そういう話なのかなーと思っていたら、別にそんなことはなかった」

あとり : 「え」

FZ : 「い……いい話?」

高原 : 「いや、『青い花』はいい話だったけど、私がその昔読んだ本は、なんか、別に、日本の話だった」

FZ : 「えええええ」

高原 : 「ただまあ……君の悲しいことや、あるいは、それでも君がする優しいことは、……どこかの山で花になって、誰かの所へ届いている。……だから君は、独りではない」

GM(汐) : 「……おはな」

高原 : 「(うなずく)」

GM : そうすると、汐はのこのこ歩いてあとりに近づく。

あとり : 「……?」

GM(汐) : 「“かれきに、はなが、さきました。”……(ぺこりと頭を下げる)」

あとり : 「……(微笑む)じゃあ、私は……あれ、えらい人に召し抱えられちゃうのかな」

GM(汐) : 「!!」

あとり : 「……でも、そうしたら、その人のところで、また……花を咲かせればいいよね」

GM(汐) : 「……」



 少しだけ顔を出した汐とあとりは笑いあう。



FZ : 「さて支部長」

高原 : 「何だ」

FZ : 「重大な問題が」

高原 : 「……聞こうか」

FZ : 「車が壊れた」

高原 : 「……」

FZ : 「誰かさんのせいで」

あとり : 「でも、運転できなくなったわけじゃありませんよね」

FZ : 「あれ大丈夫なのか? 穴あいてるぞ!?」

あとり : 「わかりません。私にはなんとも言えません」

高原 : 「あれは、まあ、ダメだろう!」

FZ : 「えっ」

あとり : 「それはそれとして支部長、」

FZ : 「あの、しぶちょ……」

あとり : 「非オーヴァードの運転手さんの車が一台必要です」

FZ : 「しぶ……」

高原 : 「連絡は、何にせよ取る必要があるわけだ」

FZ : 「支部長……」

高原 : 「大丈夫だ! 日曜が休みだから、車はそのとき私が直してやる!」

FZ : 「いや、断じてノー」

高原 : 「自分でやりたい」

FZ : 「そんな能力ないでしょう支部長」

高原 : 「誠意はある」

FZ : 「支部長の誠意は大変ありがたいですがあの」

高原 : 「それじゃ、今とりあえず必要なのは」

FZ : 「あれ、流れた」

高原 : 「非オーヴァードの運転手と車、それと私たちの移動手段」

FZ : 「……(携帯電話)もしもし、馬伏」






GM(馬伏) : 「おう! 渡な……じゃない、フェイタルゾーン!」

FZ : 「もういい。もう今日はいい」

GM(馬伏) : 「いいのか!?」

FZ : 「うむ。お前車持ってる?」

GM(馬伏) : 「ああ、車ぐらいならお安い御用だ!」

FZ : 「うむ」

GM(馬伏) : 「他は何だ!」

FZ : 「いや、汐ちゃんを保護したからな、」

GM(馬伏) : 「そうか! 追いついたってことだな!」

FZ : 「うむ」

GM(馬伏) : 「じゃ、お前はこれから戦いに行くんだな!」

FZ : 「いや、終わった」

GM(馬伏) : 「分かった、汐ちゃんのことは俺に任せ……ん?」

FZ : 「終わった。終わった」

GM(馬伏) : 「え?」

FZ : 「戦いが終わって、汐ちゃんを保護したんだ」

GM(馬伏) : 「……すごいなお前」

FZ : 「まあ、私だけがやったわけじゃないからな」

GM(馬伏) : 「へええ……」

FZ : 「だから、お前は、車を持っているなら……施設の職員なんだしちょうどいい、ここまで来て、汐ちゃんを乗せて施設に戻ってくれ」

GM(馬伏) : 「分かった。他には!」

FZ : 「いや、ない」

GM(馬伏) : 「え、ないの?」

FZ : 「汐ちゃんは今、精神的にもたいそう落ち込んでいるだろうし、身体的にも化学的に色々されてしまっているので、それを元気付けてやったり医者を呼んだりするのがお前の役目だ」

GM(馬伏) : 「分かった、任せろ! 他は?」

FZ : 「何だ何だ。もうお前色々バックアップしてくれたろう」

GM(馬伏) : 「お、おう、分かった。……おい、みんな! 今日もういいって!」

FZ : 「みんな!?」

あとり : (フェイタルゾーンの知人)「えー、なんだよ!」

高原 : (知人)「渡辺の奴、もういいのかよ!」

GM : (知人)「なんだって? どうなってんの?」

高原 : (知人)「あいつがこんなすぐに何とかできるわけないだろ!」

FZ : 「お前たち……」

GM(馬伏) : 「うん?」

FZ : 「……い、1シナリオに3回使っちゃったぞ、もう!」

GM : (笑)

高原 : (知人)「冷てえこと言うなよー」

GM : (知人)「ほら、あれだ、あの、やる気はまだある!」

あとり : (知人)「データ的には何もできないけれども」

高原 : (別の知人)「ちょっと、私まだ今来たばっかりなのよ!」



 がやがやと騒ぐ知人たちをなだめ、車を頼むフェイタルゾーン。






FZ : 「……何とか手配はつきそうです」

高原 : 「助かるな。……相浦くん」

あとり : 「はい」

高原 : 「携帯電話は使えるかね」

あとり : 「はい。(受け取る)」

高原 : 「じゃあ、ラボに電話をかけて、全員無事だと……いや、それは語弊があるな。『3人とも無事で、内海汐を保護した』と」

あとり : 「(うなずいて操作)」






GM(研究者) : 「……支部長! 支部長ですか、ご無事ですか!」

あとり : 「(携帯を手渡す)」

高原 : 「無事だ」

GM(研究者) : 「……(大きな溜息)」

高原 : 「ひとまず一見は落着し、アンプルは、見える範囲で回収できた。これより帰る」

GM(研究者) : 「はい……! ……あの、」

高原 : 「うん」

GM(研究者) : 「……いえ、……すみません。詳しいことは、また後で」

高原 : 「……そうだな。追って話すこともあるだろう。今回は君たちも、気が気でない状況にはなったと思うが……」

FZ : (高原?)「お前たちに話すことは何もない!」

GM : ええ!?

高原 : 「戻ってから、簡単に説明はする。その後で、ゆっくり休んでもらって、みんなの頭がしゃっきりしたら、明日の朝にでも改めて、昨日は大変だったなという話でもしよう」

GM(研究者) : 「…………はい」

高原 : 「それぐらい、状況は落ち着いたところにいった」

GM(研究者) : 「……ありがとうございます、支部長……」

高原 : 「うん」

GM(研究者) : 「……尻拭いさせてしまって、今回は本当に……あの、」

高原 : 「うん?」

GM(研究者) : 「あの、いくらでも、懲戒とか、」

GM : (後ろの研究者たち)「懲戒免職とか」「め、免職は……」

高原 : 「いやいや、島津さんとかお子さん生まれたばっかりだろう」

GM(研究者) : 「あ、いやあの、でも! ……罰は、受けます!」

高原 : 「……。罰するのなんだのと言うのは、まあ……やってると、きりがない!」

GM(研究者) : 「えっ」

高原 : 「ある程度はまあ、やらなければいけないし、するが。するが……その辺の査定をあれこれするのは私は苦手なので、大雑把にやるから覚悟しておけ」

GM(研究者) : 「わ、わかりました!」

高原 : 「(うなずく)」

GM(研究者) : 「車お出ししますか、支部長?」

高原 : 「いや、既に渡辺が手配してくれた」

GM(研究者) : 「さすがですね、フェイタルゾーンさん……!」

PL : (笑)

GM : 一般エージェントからの信頼が高い(笑)

高原 : 「だからまあ、大丈夫だ。辛い者がいれば先に家に帰ってもらっていても構わない」

GM(研究者) : 「いえ、それは!」

高原 : 「わかった。じゃ、おいおい戻るから、……まあ、みんな、あんまり心配せずにいてくれ!じゃあ、切るぞ」

GM(研究者) : 「はい、……おつかれさまです! お気をつけて!」






あとり : (携帯を受け取る)ぴっ。(切るボタン)

GM : え、切るのもやってもらうの!?

高原 : 私の知ってる切り方は(受話器を勢いよく置くジェスチャー)これだけ!

あとり : 実は家庭用の子機も使えない?(笑)

高原 : そうそうそう。

GM : 今の流れの一番の問題は、来て3週間のあとりが、何も言わなくてもスッと受け取って切ってくれるようになってるとこだよね!?

FZ : 何回やらせた(笑)

あとり : 初日は戸惑ったかもしれない……(笑)

GM : 優秀な順応力(笑)それじゃ、各自のエンディングに移行しようか。






GM : 希望のエンディングがあれば申請してね。特にないときはこっちからのを振るよ。

FZ : 私は施設に行きたい……かな。

あとり : 支部の……ラボの人と少し話を。服が置きっぱなしだし……

高原 : 私もラボの方だね。