Scene Player ―― 生徒会長:秘野森 匿太郎
秘野森 : こっち行かせてもらいます。ドラマシーンにします……シーン表9。
GM : 「静かな授業中の風景」……授業が無い。
ユヤ : じゃ、静かな教室。
GM : かな。誰もいない。ここはちょうど何の展示にも使われていない教室。賑やかな文化祭準備中の学校の空白地帯。
秘野森 : 登場指定は、陸奥龍之助。
龍之助 : お。
秘野森 : 同じ3年同士だからな。……外からは準備の賑わいが聞こえて、
龍之助 : (制作中の生徒)「そっち持っててそっち持ってて、……あー! 崩れたー!!」
シオリ : そこのタイミング!?(笑)
秘野森 : 窓から廊下からそういうのが聞こえてくる中、静かな教室で……サボろうとしていた龍之助を。
ユヤ : あーー(笑)
龍之助 : (窓から外を見ながら)「上からだとあんまなー……アングルは低い方がいいよね」
ユヤ : 女の子見てる(笑)
龍之助 : 「んー。見えない。……見ーえーなーい」
秘野森 : 「(後ろからひょいと覗き込む)……胸元を見るのも少ししんどいな」
龍之助 : 「うおっ!」
秘野森 : 「ふむ」
龍之助 : 「……さ、サボってない! 視察してる、視察!」
秘野森 : 「うん。いいことだ」
GM : 体育館の方からは、チューニングというかハウリングの音も聞こえてくる。キュイーン……
龍之助 : 「……どうした、秘野森。忙しいだろうが、お前」
秘野森 : 「僕だって、多少はセンチメンタルな気分にもなる」
龍之助 : 「……」
秘野森 : 「もう、半年だ」
龍之助 : 「……ああ」
秘野森 : 「楽しい高校生活も、あと半年で終わる」
龍之助 : 「……まあな。お前はこの3年間ずっと、この学校のため、この学校のためってやってきたから。思い入れも強いだろ」
秘野森 : 「清陵学園生として」
龍之助 : 「うん」
秘野森 : 「最後の文化祭だ。僕は、この文化祭を必ず良いものにして、生徒会長の任を果たしたい」
龍之助 : 「……」
秘野森 : 「龍之助、君はどうだ」
龍之助 : 「まあ、お前がそうしたいんなら、そうなるようにするけどさ」
秘野森 : 「……」
龍之助 : 「どうなったとしたって、きっと楽しいよ」
秘野森 : 「……?」
龍之助 : 「ああやってさ。見てみ、あれ」
龍之助 : 「崩れてんじゃん?(笑)そしたら」
秘野森 : 「うん。また、組み直す」
龍之助 : 「そうそう。……で、例えば間に合わなくてさ。上のとこの花、5、6個足りなくってさ。『あの時、結局間に合わなかったんだよなー』って笑い話にして、……それだってきっと、いい思い出だ」
秘野森 : 「……」
龍之助 : 「……あんまり、気負うな」
秘野森 : 「……。やはり、君を生徒会に誘ったのは正解だった」
龍之助 : 「はは。あん時は驚いた」
ユヤ : ど、ドラマできてる……!
GM : うん、いいコンビだな。腐女子がカップリングしそうな勢いで。
秘野森 : ヤメテー!
龍之助 : ヤメテー!!
全員 :(笑)
秘野森 : 【感情】を結ぶ上でね!? 接点を何処に求めようかと思って、こうドラマをね!?
シオリ : うんうん、大丈夫。ドラマ性に惹かれるから、腐女子は。
ユヤ : お姉さん、ふじょしはって言葉が全てをダイナシにしてます!
秘野森 : かっ……感情判定をしますよ!?
GM : はい! がんばれ!(笑)
秘野森 : 判定技能《用兵術》。
龍之助 : 使われてたー!(笑)
ユヤ : 普通に人心掌握技術だった(笑)
秘野森 : 7で成功。内容は……「共感」か「不信」。「共感」で。
龍之助 : ウリィー。……「友情」か「怒り」。
ユヤ : 「怒り」にする?
龍之助 : 「お前が……お前が生徒会なんかに誘うからッ……!!」
ユヤ : 憎悪が!?
龍之助 : ゆ、「友情」! 友情!
GM : 「愛情」になったら面白かったのになあ(笑)
龍之助 : 「成功っていったって、いろいろ幅がある。……『お前にとっては』どういう文化祭になったら『成功』だ」
秘野森 : 「……。皆、が。参加した皆が、良い気持ちで文化祭を終えることができるのが……成功だと思っている」
龍之助 : 「……」
秘野森 : 「さっきお前が言ったように、アーチから花が外れていて、それでも皆が笑い合うことができたら、……そうだな、それは成功なんだろう」
龍之助 : 「『あの時お前がさっさとしなかったせいだろォ!?』って憎み合い血の雨が降るようなのはダメって事な」
GM : (笑)
龍之助 : 「OK。……わかった」
秘野森 : 「僕は、人を何処に配置すればどう動いてくれるか、そこについては詳しいつもりだ。だがきっと、そういった……人の心の機微については、恐らく君のほうが上手なのだと思う」
龍之助 : 「人数的に半分だけな!」
秘野森 : 「それでもいいさ。その半分が、逆に僕にはよく分からない」
龍之助 : 「……」
秘野森 : 「……だからってそういう意味では無いぞ」
龍之助 : 「わかってるよ!(笑)……ま、うちにはユヤちゃんがいるからさ。あの子は性別関係なく鼓舞して回ってくれるし。それで採算が合わなくなったらシオリちゃんが何とかしてくれる。……お前は、いい面子選んだよ」
秘野森 : 「そこは自慢だ。……自慢の、生徒会だ」
秘野森 : 「では、僕は行く。あまりここでの視察に力を入れすぎないように」
龍之助 : 「おう」
部屋を出て行く秘野森会長。
副会長も間もなく居心地悪そうに窓を離れた。
龍之助 : 「……うあー。あそこまで言われたらサボりづれえ、あのやろ」
沈黙。
窓の外から笑い声が聞こえる。