Scene Player ―― 生徒会長:秘野森 匿太郎
秘野森 : 戦闘シーンを宣言。水波カオルに戦闘を仕掛けます。
GM : 【居所】は持ってるね、OK。
秘野森 : こっちか水波カオルに【感情】持ってる人は乱入可能。
龍之助 : 出ていいか。
シオリ・ユヤ : 乱入します。
GM : ではシーンプレイヤー、戦場表は。
秘野森 : 振りません。「平地」で。……生徒会室に全員を呼び出す。
全員 :おおおお!!
ユヤ : 生徒会室って平地?
秘野森 : 平地じゃないとランダムになるから! 生徒会室「極地」とか困るから!
ユヤ : 「水中」とかな。
龍之助 : 今までどんな会議してたの!?
ユヤ : ……最初から全員出るから、5ラウンドはあるか。
秘野森 : しかしクライマックスではないから、一撃食らうと脱落する。そこが面倒ではある。
ユヤ : 真琴ちゃんが一撃入れると目覚めるはずだったとかだとまずい。
龍之助 : ……。会長は、待ち構える形?
GM : では、PC4人が生徒会室で待ち構える場面から行きましょう。
通い慣れた生徒会室。
が、そこにいつもの賑やかさはない。
ふたりを欠いたメンバーが、沈黙のうちに席についている。
GM : 扉がからからッと開いて、「会長、参りましたよ〜」とカオルが入ってくる。
秘野森 : 「すまない。緊急の呼び出しをしてしまった。これで揃ったかな」
いつものように。そう、いつものように、
秘野森生徒会長が、背筋を伸ばして朗々と口火を切った。
秘野森 : 「――清陵学園生徒会には、ひとつの懸案事項があった」
全員:「……」
秘野森 : 「皆は恐らく『月読』という名についてそれぞれ聞き及んでいると思う。そして、その『月読』の正体が……水波君、君であることもだ」
GM(カオル) : 「……え?」
ユヤ : 「(うなずく)」
GM(カオル) : 「月読って、さっきのあの、……え?」
秘野森 : 「諸星君は、それを知っていた。そうだね」
GM : 水波カオルはうろたえて喋りだす。「え……? も、……諸星が何かって、それが僕と何か関係があるんですか、会長!」
秘野森 : 「ああ。大有りだ。君が『月読』と呼ばれる存在だ。自覚はないのだろう。恐らく、自分でそうしたのだろう」
GM(カオル) : 「自覚がとか、月読とか、それ、何の話なんですか!」
秘野森 : 「水波くん。――君が作った『同好会』とは何だ?」
秘野森 : 「君は『同好会』を作った。君は、そのことは覚えているはずだ」
GM(カオル) : 「そ、……それは、会長たちと仲間になったってことですよ。僕は、仲間で何かするのが好きだから」
秘野森 : 「ここは『同好会』ではない。同好の士の集まりではない。清陵学園を守る『生徒会』だ」
GM(カオル) : 「う……」
秘野森 : 「たとえ、君が『月読』としての記憶を取り戻していないとしても。……そろそろ僕は限界だ」
GM(カオル) : 「ほ、本当に会長、何をおっしゃってるのかわかんないですよ! 限界だからって……何をするって言うんです!」と、傍点つけながらの感じで。
ユヤ : ドドドドドドド
秘野森 : 「君を、排除する」
GM(カオル) : 「生徒会をクビってことですか!」
秘野森 : 「生徒会をではない。この学園、……そして」ぐっと握り拳を作って。「……この世から、排除する」
龍之助 : 傍らに立ちます。
GM(カオル) : 「ちょっ……!」驚いて立ち上がって、2、3歩よろめいて。周りを見回して「せん、先輩方、止めて下さいよ、会長を!」
秘野森 : 椅子からガタリと立ち上がって、文化祭用に準備していた、白い布のかかったテーブルを退かす。
ユヤ : 「……ごめんね」扉の前に。ガチャリと鍵を閉めます。
秘野森 : 習っている古武術の構えを取る。
GM(カオル) : 「ちょっと……!」
シオリ : ……その前に出る。
全員 :!!
会長、龍之助、ユヤの三人の前に、
シオリはカオルを背中に庇って立ちはだかった。
シオリ : 「水波君が、水波くんのままなら、私は……」
秘野森 : 「三好くん。言ったはずだ。僕たちには時間がない。時間は、無限ではない」
シオリ : 「わかってる。終わらせたいんでしょう?」
GM(カオル) : 「ま、待ってください! 武術とかはやってないけど、僕だって男だ! 会長がシオリにまで何かするってんなら、僕だって!」プルプル震えながらも構えます。
シオリ : 「会長、ごめんなさい。でも、天波先輩が言ってたの。――恋に生きてもいいんじゃない、って」
秘野森 : 「――……」
龍之助 : 「秘野森」
秘野森 : 「……大丈夫だ。一人も二人も変わらん」
ユヤ : 「会長……」
秘野森 : 「いや。……もう、一人死んでいるのだったか」拳を固めて構える。
龍之助 : 「……。よし。大丈夫だ。お前たちは傷つかない。傷つけさせもしない。気の済むまでやれ」
ユヤ : 「先輩!?」
龍之助 : 「シオリちゃん。君も、俺が守りたい『4人』のひとりだ。気の済むまでやれ。こちら側に来いとは言わない。ただし傷つけさせない」
ユヤ : か、【かばう】で!?
龍之助 : うん。
ユヤ : ラウンド一回……
龍之助 : が、がんばるよ!(笑)
龍之助 : ……とは言うんだけど、これ、カオル倒すのって難しいよね!?
ユヤ : うん……クライマックスに入らないなら、難しいと思う。クリティカルヒット入れたとしても4点。脱落された後でどうなるかを見守るくらいしかない。
秘野森 : どうしたらいいかはわからないから、やれるだけのことをやる!
龍之助 : ……(頭を抱える)
ユヤ : どうしたーー!(笑)
龍之助 : き、決めてたはずなんだけど、なんだけど……!! ここ来て揺れる、うわー……!
ユヤ : 好きにやれ!
シオリ : 私もやるし!(笑)
秘野森 : 来い!
龍之助 : うう…… よし、行く!
龍之助 : 「……(押し殺した声で)秘野森」
秘野森 : 「……」何も言わずに、拳を握りしめて答える。
龍之助 : 「あと、……何日かは、……持つ、よな?」
秘野森 : 「……分からない。取り込まれてしまうかも、しれない」
龍之助 : 「ここで倒せなくても、……繰り返し続ければ、いつかは倒せる。……お前の目的は、それでいい……よ、な」
秘野森 : 「……分からない。目覚めなくなる時が来るかもしれない。今は……正直、もう、義憤で体を動かしているに過ぎない」
龍之助 : 「……!!(奥歯を噛み締める)」
シオリ : 「ごめんなさい。会長を助けたいって思いもある。だけど、……私には、こうすることしかできない」
GM(カオル) : 「何言ってんだよシオリ、逃げろ!!」
シオリ : 「言ったじゃない! ふたりで歩いて行こうって!」
GM(カオル) : 「ばか、それでも! ……会長はずいぶん武術ができるって聞いた、噂もいくつも聞いたことがある。俺が戦って勝てるかどうかわからないけど、でも、シオリが逃げる時間くらいは作ってみせる!」
シオリ : 「逃げない!」
GM : では、プロットだ!
龍之助 : ……うおーーーー(じたばた)
秘野森 : ふふふふ。
シオリ : 3、龍之助 : 6、秘野森 : 4、ユヤ : 1。
そしてカオルは。
GM : 0。
シオリ : ゼロ!?
秘野森・ユヤ : 「一般人」……!!
秘野森 : やばい、届かない……いや、違う。0は誰からでも届くんだ。
GM : そう。誰でも殴れます。
秘野森 : 殴る時は予測値?
GM : それも使わない。
秘野森 : 使わない!?
龍之助 : 「一般人」というか……エキストラ……?
GM : では6、龍之助の行動。カオルは「シオリ、逃げろ!」と言って会長に向かっていきはするんだけど、戦闘に入ってみんなが「音速」とか「光速」になった瞬間から、彼の眼にはもう何も見えなくなって「えっ……!」て驚く。
GM(カオル) : 「消えた……!?」君たちから見ると、彼は文字通り止まって見える。振り上げたまま行き場のない拳、開いた口の動きが、本当にスロー・モーションに見える。だから彼を間合いに入れるのは非常に容易い。
秘野森 : なんだこれ。なんだこれ!
シオリ : ひゃーー!
秘野森 : あと見えてない【秘密】は、龍之助のと……「文化祭の思い出」のくらいしかないんだが!
ユヤ : え、プライズに? 何か条件が!?
秘野森 : かもしれない……! 文面としては明かされていないから。
シオリ : でも私が話は聞いて……そっか、見てはいない!
秘野森 : うん。だから、龍之助が何とかしてくれるのを信じている。
龍之助 : (頭抱えてる)……俺の【使命】は、ユヤちゃんとシオリちゃんは知っている通りなんだ。シオリちゃんと、秘野森と、ユヤちゃんを。
ユヤ : うん、うん。……え!?
守ること。
だから、
龍之助には、クライマックスを起こすつもりは、なかったのだ。
龍之助 : ……GM。これ(クライマックス突入条件)って、敵側が脱落してしまうともう間に合いませんか。
GM : ……はい。
龍之助 : うう……!!
ユヤ : 悩んどる悩んどる。なんだろうなんだろう。
龍之助 : ……光速の移動に入ったところで、……秘野森を。さっきは言葉で聞いたけど、自分の眼で彼の動きや顔色を確かめます。……どうなんだろう。
秘野森 : ルールというかシナリオ的に、もうダメなんだろうと思ってる。4サイクルでぎりぎり、それをこういう風に表現してた。
龍之助 : ……。わかった。GM、会話って入れていいですか。
GM : いいよいいよ。ニンジャ会話だ。
「シノビ語り」というタームが咄嗟に出てこない我々。
龍之助 : お互いが消えるような速度の移動の中で、静かに。「……秘野森。シオリちゃん。ユヤちゃん。ごめんな。俺は3人を守りたい」
秘野森 : 「……」
龍之助 : スローモーションになってるカオルを指さして。「俺たちが一緒にいられるのは、この空間の中だけなんだ」
ユヤ : 「先、輩?」
龍之助 : 「分かったろう。今のこいつと、俺たちは違う。自分たちのこと、何となく変だとは思ってたろうけど、これで本当に分かっちまっただろう。俺たちは人外だ。もう人間なんかじゃない。この力を手に入れるまでのこと、覚えてるか。こんなことができるようになるまでには、人外の修行と、地獄の覚悟が必要なはずなんだ」
ユヤ : 「……ごめんね、先輩。死んだときに、全部置いてきちゃった……」
龍之助 : 「置いてきたなら、置いてきたでよかった。正直、俺はそれでいいんだ。その方がいい」
秘野森 : 「僕らには、分からない」
龍之助 : 「記憶がないなら、ないままでいい。こんな風に体が動く、それで身体と心が感じることだけで十分だ」
ユヤ : 「……それは」
龍之助 : 「そのうえ、そして俺たちはな、……仲間じゃないんだよ。仲間でも何でもないんだよ」
秘野森 : 「……それは、過去の話か」
龍之助 : 「そうだ。そして、未来の話だ。未来が……明日がやってきたら、俺たちはそこに戻るんだ!」
シオリ : 「……」
龍之助 : 「ここは、まやかしだ。そいつが作った幻の世界だ」
シオリ : 「生徒会も、学校も、……最初から、どこにもなかった?」
龍之助 : 「そう」
ユヤ : 「……そ、……」
龍之助 : 「シオリちゃんには話したね。俺たちは、『忍者』なんだ」
シオリ : 「おれ、『たち』?」
龍之助 : 「そう。俺だけじゃない、シオリちゃんも。秘野森も、ユヤちゃんも」
GM : それを明かすのであれば。……みんなの頭の中に、突然白黒の映像が浮かぶ。ノイズ交じりのひどい映像、断片的な映像だが、それはどこかのビルの中……
ユヤ : 導入シーンだ……!!
シオリ : おおおおお!!
GM : そう。そしてその後、月の夜。4人と、2人が戦っている。その映像も。
ユヤ : 「あれ、……アタシたち……?」
龍之助 : 「そう。俺たちだ。……その顔、よく見てみろ。全然違うだろ? 表情も何にもないだろう? ユヤちゃんを殺した月読だけじゃなかったんだ、俺たちみんな、ああいう生き物なんだ。今回は、たまたま同じ仕事でここに来たけど。違う指令が下ったら、その瞬間に殺し合いになるんだ。ユヤちゃんを殺したのは、月読じゃなかったかもしれない。俺たちの誰かだったって、何もおかしくなかったんだ。あの時の月読と同じ顔で、何を感じることもなく、菜っ葉切るみたいにお互いのこと、殺すことになるんだよ」
シオリ : 「……そんな」
龍之助 : 「高校生。生徒会。文化祭。準備に、恋に、一緒の時間に。馬鹿言ってさ。屋上行って、教室でだべって、ソファにシーツなんか掛けてさ。こんな『楽園』はもう、この幻の中にしか無いんだよ……!!」
泣き笑いのような表情で、龍之助が叫んだ。
呆然と、シオリが呟く。
シオリ : 「……おさななじみ、だったのに」
龍之助 : 「ここにいれば、そのままだ。その思い出がただ一つの事実だ。その記憶が有効なのは、この忍術の中だけだ」
シオリ : 「……ああ、……だから、ふたつ、あったんだ。終わらせたい。終わらせたくない」
龍之助 : 「ああ。きっと、シオリちゃんの心の中にあったその葛藤が、この場所のすべての真実」
龍之助 : 「そして何より、……ユヤちゃんはもう、ここから出たら生きてはいない。俺にはそれが耐えられない……!」
ユヤ : 「先輩、」
龍之助 : 「だけど、それは、それは俺が何とかする。だけど、この4人は」
ユヤ : 「先輩、アタシはもう、い……」
龍之助 : 「ごめんな、ユヤちゃん。そのお願いは、聞けないって言ったよな」
ユヤ : 「うん……うん……!」
龍之助 : 「俺は4人を守りたい。4人がこの4人でいられる場所を守りたい。いつかでいいよ、一度でもいいよ。その可能性を守りたい。あの顔じゃなく、笑って会いたい。なあ、できるかな。できるかなあ……!」
ユヤ : 「だって、先輩……ううん、龍之助さん、持ってるもの。あなたは生徒会の、この文化祭の思い出を持ってるもの」
龍之助 : 「これも幻だ。こいつが作った、忍術のかけらだ」
シオリ : 「でも、その思い出の中で、私たち、生きてきましたよ」
龍之助 : 「忍者に戻ったら、それもどうなるかわからない。心とか、感情とか、絆だとか友情だとか愛情だとか、そういうものを捨てる修行を俺たちはしてきたんだ。忍者の修行は武術の修行とは違う。心を殺すための修行だ。存在しない心の中に、思い出の残れる場所は」
ユヤ : 「でも、……龍之助先輩は、忍者としての記憶があるのに、アタシのことも会長のことも、愛してくれたじゃない!」
龍之助 : 「――……!!」
ユヤ : 「だから、できると思うんだ。きっとできると思うんだ。もしも忍者に戻ったアタシが能面みたいな顔してたら、ひっぱたいて気づかせてくれればいいよ。これが全部終わった後に、宝物が……先輩の中には残ってるもの」
龍之助 : 「……」
秘野森 : 「……。フィクションだけの話なのか。その忍者というものが……実感はわかない、実感はわかないが、……例えばこうだ。忍軍大連合。例えばこうだ。流派を超えた血のつながり。そういったものもあるはずだ。だから、未来はあるはずだ」
龍之助 : 「――わかっ、……た」
龍之助 : 「……そう、だよな。俺、なんで忍者のままだったのに、こんなこと言ってるんだろうな」
秘野森 : 「それが何よりの証拠だ!」
龍之助 : 「分かった。……分かった。……ごめんな。守るって言ってたのに、最後の最後で頼っちまった」
龍之助 : カオルを見ます。
GM : カオルは止まった時の中、まださっきの拳を振り上げている。
龍之助 : その彼の方へと顔を向けて。そのまま。「秘野森。シオリちゃん。ユヤちゃん――『ずっと、いっしょだよ』!!」
シオリ・ユヤ : 「……!!」
GM : 瞬間。激しい振動と、ビシリ、と大きなヒビの入る音。ガラスの砕けるような音。たくさんのシャンデリアが床に落ちて雨粒と降るような音がして、世界が砕け散ります。――この戦闘をここで強制終了し、クライマックスフェイズに移行します。
ユヤ : おお……!!
5シーン目、カオルはもう一度後に回ると宣言。
秘野森がシーンプレイヤーとなった。